今だからこそ必読?
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現在の天皇家の直接の系統につながる後花園天皇の実父である後崇光院貞成親王の生涯を読み解いた好著です。
後崇光院貞成親王は「看聞日記」という実に詳しい日記を残した人で、その日記を読み解きつつ現代的視点を交えています。
不遇の伏見宮家に次男として生まれ、40歳でやっと元服、46歳で宮家相続、48歳で後の後花園天皇誕生、54歳で親王宣下、57歳の時に我が子が天皇として践祚、76歳の時に太上天皇の尊号を受け、85歳で崩御。時代はと言うと、足利義満から足利義政までと重なります。
何とまあ大変な時代に天皇家本来の嫡流に生まれ、ようやくのことで嫡流に天皇を取り戻したのです。同時にとても多芸多才で人間味豊か、愛情たっぷり、あれこれ思い悩んではさまざまに手を打つ。頭の下がる思いです。
改めて再認識したのが、正長元年は天皇家と足利将軍家の両方に代変わりがあったこと。先に足利義教が足利将軍家を継ぎ、義教の段取りと後押しもあって後花園天皇が即位しています。貞成親王一家に一生懸命肩入れし一家の復権に大きな力を貸したのが義教であったことを初めて知りました。その恩人でもある義教が嘉吉の乱で横死した時に、「このような将軍の犬死は」と日記に書き残した貞成親王ですが、どのような心境でこうした表現を取ったのでしょうか。人の心の闇を垣間見る気持ちです。