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安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

価格: ¥3,885
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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可視化の弊害 ★★★★★
欧米の理想ではなく実態(現実の欧米社会は、将来モデルとならない)・・・。
「警察官が同一の街に固まって居住する傾向のあるフランス」
「犯罪の多さも凶悪さも日本の比ではない。貧困層と富裕層の居住地が地理的に分離し、
通う学校も異なり、連帯感が薄く、荒れた地域が捨て置かれている」

「現実の場面場面において、他人の領分に深く踏み込むことを辞さず、
その場をしきっていく、現場の鬼と私が呼ぶ者たちの活躍なしに、
安全な日本の実現はなかったであろう・・・
犯罪者の更正の成功は、このおかげにちがいないのである」

安全神話の基本構造
 =「一般住民に犯罪関係の情報を提供しないこと」で「犯罪を非日常世界に閉じ込める」
安全神話を維持しようと思えば当然だった隠蔽体質・・・。
「あらゆる権威の失墜現象が、先進各国で起きている・・・これらの不信は、
あらゆる領域に透明性を求める動きとなっている。
もはや、情報公開と説明責任から逃れられる領域はない」
「犯罪実数は本当は増加していないし、治安の急劇な悪化も起きていない」にも関わらず、
「安全神話に守られなくなった後に生まれたのは、不安に耐えられない、
個人とも市民とも呼べない「要求の高い住民」であった」

「全ての体罰(〜人権侵害)が悪とは言いがたい・・・法解釈の技術で、
この問題を超えることはできないであろう」
「(狭い所でゆっくり話を聞き、個別事情を考慮する)現場の鬼が、
法律にあからさまに反する行為をし、
それが表面(→取調べ現場をビデオ録画)に出されたときどう対処するか」
治安問題を考える際のベースキャンプ ★★★★★
本書は3部構成です。
第1部においては、犯罪白書などの統計データを実証的に読み込み、
体感治安と現実とのギャップをあぶり出します。
この統計の読解過程だけでも十二分の価値があります。
そして米仏などの犯罪実態との比較を交えながら、
徐々に焦点は犯罪の少ない日本社会の分析へと向けられていきます。

第2部は、いわゆる世間論を念頭に、
我が日本社会が犯罪にどう対処してきたか、
またなぜ市井の我々が安全神話を信じるようになっていったかが、
刑事法システムのみならず、
タブーも含めた様々なバックアップシステムにも言及しつつ、
ときに大胆に検証・回顧されていきます。

第3部は、第1部、第2部を前提に、
では、安全神話崩壊後の我が日本社会において、
いかにして犯罪と向き合っていくかの提言がなされていきます。
キーワードは「共同体」に集約できます。

一読して思ったのは、
本書を魅力的なものにしている最大の原因は、
著者のざっくばらんな語り口にあるのだろうということです。
一見分厚い書物ですが、サクサクと読めてしまうことでしょう。
また、従来の左右・保守革新といった軸を離れ、
同時に、安易に欧米の業績に依拠することなく論証する姿勢にも好感が持てました。

近所の安全が気になる親御さんから刑事司法の実務家まで、
幅広い読者を惹きつける好著だと思います。



釈然としない ★★★☆☆
「犯罪の凶悪化は進んでいるか?」というところから始まって、日本の治安や刑事司法の特徴を西洋との比較を織り交ぜながら説いた本。

犯罪が凶悪化しているとはいえないという指摘は、現在においてはいろいろな本・ブログで指摘されていることで、肯定的に評価してよいだろう。しかし、そのほかのところは、どうも釈然としないところが多い。何点か挙げると、(ア)継承者の不在は技術革新の問題もあるのではないか、(イ)「現場の鬼」との1対1のコミュニケーションを重視してビデオ導入に反対するのでよいのか(自白の任意性を争う事件は結構多い)、(ウ)地域共同体に期待できるか(長時間労働に関する考察がない)、(エ)どこの国でも、どんなモデルでも治安に対してどこか不都合が生じるのはやむを得ないのではないか、など。

以上のように、犯罪が凶悪化しているとは言えないと指摘したところが星5つ、他のところは星2〜3つ、全体として星3つ。
まあまあのところで・・・ ★★★★☆
この本についての評価:保守派は「安全だ安全だというがテロ・拉致・少年犯罪と、ひどい状況になっているじゃないか!」というもの。他方革新左派は「ほら、この本がいうように治安はそんなに悪くなっていない」というもの。保守は現状の安寧を肯定し、革新は現状の矛盾の激化をつくものだとおもっていた僕にとっては、左右の関係がえらくねじれたなあと思ってしまうのだが。
 本書の統計的結論については、そのとおりだとおもう。明らかに日本の治安は悪化していない。
 また「にもかかわらずなぜ治安が悪化した気がするのか」の結論についても、半ばは同意できる。端的に言えば、「安心」を供給してきた業界=企業社会が壊れつつあるからだ。警察の捜査能力の機能変数でもない、本書はエズラ・ボーゲルのような「日本警察優秀論」に立っていない。もともと優秀でもなんでもないから、能力が落ちるわけでもないのだ。
治安問題はさまざまな政策のなかでも論者のイデオロギーが前面に出やすいとおもうのだが、この本の著者はそういう意味では、いろいろな主張に「一理」を見出している。それが本書に妙な説得力をもたらしているし、他方で(統計処理はともかく)その主張には首尾一貫しないあいまいさと矛盾がある。
 たとえば、「日本的共同体」について、一方ではそうした共同体のハンセン病患者などにたいする差別と排除の「冷酷さ」を指弾しつつ、他方で差別と排除を孕む「夜」の世界のゾーニングを説いたりしている。
 ようするに、(監視カメラは全部だめとか全部いいとか)ゼロサムではなく、まあまあのところで行きましょうというところなのだろうか。みんながまあまあのところで収めてくれればそりゃいいんだが、現状は共謀罪やら入管法改正やらと、著者の統計結果からみればまったく不必要な治安政策の強化がすすんでいる。二〇〇一年以降の世界的な治安体制の強化を踏まえて書かれているはずの本書で、その支配のメカニズムについての言及や緊張関係がないのは、ちょっと不思議だった。
読みやすいが内容は深い ★★★★★
新発売当時、各マスメディアで取り上げられ、多くの書評も書かれた話題作。それから1年以上経ちますが、全く色あせるどころか、現実がいよいよ本書に追いついてきた感すらあります。大学の教授が執筆したいわゆる「専門書」なのですが、とっつきやすいのは本人の個性によるところが大きいかと。

単に「なんだ、日本社会は安全なんだ」「でも、体感治安は確実に悪化しているから、対策をとらないと」といった結論部分をなぞるのではなく、筆者の視点自体が示唆に富んでいて、引き込まれます。学生だけでなく、マスコミでサツ回りや司法担当をしている人にもオススメです。見えないネタが見えてくるはずです。