単なる理論書を越えた価値を持つ
★★★★★
日本ジャズ史において特にプレイヤーにとって渡辺貞夫のバークリー帰り以前/以降ほど
大きな分岐点は無いだろう。帰国後の彼が、菊地雅章を初めとする当時の若手ジャズメン
にバークリー理論を伝授したテキストをまとめたのが本書である。この理論が突然もたら
された暁光に歓喜した当時の日本のジャズ界が紙面からありありと伝わって来る。
理論書としては、現在においては説明不足などと論評されたりしているが、この本で
インプロヴィゼイションを学ぶには確かにそうかも知れないが、ジャズ理論の基本と
バークリーの最大の売りとも言えるアレンジの基本を学ぶことは十分に出来る優れた
内容である。
ここからナベサダの、プーさんの、ヒノテルの音楽が始まったと言っても過言ではない。
単なる理論書には無い歴史と精神に鼓舞される。全てのジャズを志すものおよび日本ジャズファン
の愛蔵の書となるべき一冊である。