友情というほど、甘くない
★★★★★
18世紀の北米東部メーン州。開墾したばかりの居住地を、父親が残りの家族を迎えに行く間、一人で任されることになったMatt。最寄りの村からも遠く離れた野生の森の中で、13歳の少年が何ヵ月も一人で暮らす、なーんて、まさに開拓時代の醍醐味とも言える設定です。
まずは孤独。見え隠れする先住民の影。そして浮浪者と熊の襲撃。予定外の出来事に食糧に乏しくなったMattは、蜂蜜目当てにミツバチの巣に向かい、返り討ちにあってしまいます。
そこを救ってくれたのが、先住民の老人。Mattを救い上げ、手当をし、足りないものまでくれる親切さ。父親から「彼らには礼儀正しく接するように」と言われていたMattは、何か御礼をと、なけなしの自分の本を差し出します・・・が! じーさんが代わりに申し出たのは、やる気無さげにくっついて来ていた孫息子Atteanに、文字の読み方を教えることだったのです・・・。
二人の友情物語と思いきや、もう全っ然仲良くならないところが寧ろミソ。Atteanは最初から嫌だ嫌だ言ってるし、Mattだって恩人の頼みじゃなきゃ嫌だーというのが本音。仕方なくで毎日会っていても、ソリは合わないし、お互いムカつくし・・・。1歩進んだら3歩下がる感じですが、一瞬仲良くなったり、また喧嘩別れしたりで、読者をワクワクドキドキえーまたかよガーン!とさせてくれます。友情じゃなくて、本当に「交流」って感じ。
それだけに、最後の方でやっと友情っぽく(!)なってきた時は感動します。Mattの決断に泣きます。
同じ年頃の少年の間に、文化の違いや、開拓民と先住民の軋轢などの史実や、「ロビンソン・クルーソー」「聖書」などの実在の本等、様々な要素が絡み合っていて、本当に良く出来た、少年歴史小説だと思います。