優れた日本の知性を再評価して現代に生かそう
★★★★☆
日露戦争の頃30代であった朝河貫一は、当時の世界の常識に反した歴史観を持ち後世を本質的に予測した歴史家であったようだ。朝河は米大学の教師としてポーツマス条約制定時に米国に対して影響を及ぼす立場にあったが、日本の朝鮮及び満州地区の戦略を、当然ながら日本の発展の視点ではあるが、覇権的で専制的な閉ざされた旧世界から、主権尊重、機会平等で愚かな民族的無意識から開放された開かれた新世界へと導くものと位置づけるべきである主張したそうだ。その先見性、本質を見抜く力には驚く。しかし、取り入れられず国際政治から中世歴史へと研究対象を移し、その後の日米関係の中でも表に出ることは無かったそうだ。
今日、このような優れた知性を発掘し、緻密に研究して紹介する著者の見識も尊敬に値する。