前期高齢者に最適な老年学ガイドブック
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著者は、東大文学部で西洋史を専攻し、その後読売新聞社などで活躍したジャーナリストである。65歳で役職を退いた後、70歳で老年学に取り組みを開始し78歳でこの本を刊行するまでまさによく勉強したものである。それは参考文献の数が165という事実からもうかがえる。しかしあくまでも一素人として文献を読み、引用して紹介する立場を貫いている点が謙虚で実に気持ちよく読める。つまり、読者は引用文で興味を感じたら、即原著を読むことである。
私は著者より十年ほど年下でこれから本格的に老化・老年について考えなくてはならない時期なのだが、実に素晴らしい本に出会ってこれからの生き方に自信がついかと感じている。定年後で65歳以上のいわゆる前期高齢者に特に広く読んで貰いたいと思う。(余談;人類始まって以来死者は数十億人と書いているが、そんな少ない数ではないだろう。推計でいいのだが、信用できる数字を知りたいものである)。
老いに関心のある方へ
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老いというものに関心のある、あるいは年齢として関係のある多くの方にお勧めできる本だと思います。古今東西の老年に関する本(外国のものは邦訳のあるものに限られているようですが)を広く読み、分類、分析したもので、そこからの引用、要約が多くの部分を占めています。一般に知られているものも多く、その意味で新味があるわけではないが、これだけの文献を丹念に読み込んでいることにまず感心させられます。
自分の言葉にするのではなく、引用を多用している点は、賛否あるところでしょうが、私は直に原文に接することができ、好感を持ちました。引用が多いと読みにくくなるものですが、的確に使用することによって大変読みやすい文になっています。このあたりは、著者がジャーナリストということで、このような手法になれているのでしょう。実際に私は平日の3日間で読了しました。仕事を持っていますのでおそらく4,5時間で読んだことになります。かなりの年月をかけて書いたものということですので、こんなに短時間で読んでは申し訳ないようですが、それだけ読みやすくないようも充実していたと言うことになると思います。
第5章の「死をどう準備するか」は重い話題ですが、逆に読み終わってみると気分的にすっきりとし、「死についてもっとオープンに語れ」というエリアスのことばに著者ともに賛同する気になりました。死を前に人間がすすむコースを示すところでは、思わず笑ってしまったが、著者自身はかなり真剣のようで、最後まで読むと納得できるのです。哲学の面からは消化不足の点がかなりみられ、私自身異論もありますが、全体としてこれほど真剣に老いを扱った本はないと思いました。