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多民族国家 中国 (岩波新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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現代については・・・ ★★☆☆☆
中国が歴史的にどういった形で多民族国家を築いてきたかというのはよくわかってよかった。
その点でこの本は一定の評価はできる。
けれども、この本は、少数民族に対してすべて「中国」側からの視点で書かれており、「少数民族」側からの視点が欠落していることが大きな問題だ。
私はチベットの勉強をしていて、数十冊のチベット関係の本を読んだ。
しかし、私がこれらの本から学んできた中国共産党によるチベットの抑圧の現状を、この本が私たちに示してくれているとは思えない。
例えば、チベットのパンチェン・ラマがダライ・ラマによって選ばれた者と中国政府に選ばれた者と2人いるという記述が本書にある。それは全くの事実であり、正しい。
しかし今チベット人の間で問題となっているのは、中国政府がダライ・ラマが選んだパンチェン・ラマを誘拐し、今もなお中国のどこかに監禁しているということだ。そしてチベット人たちは彼の帰還を望み、中国政府の決めたパンチェン・ラマを「偽パンチェン」と呼び、まったく信仰していないのだ。本書においてこういったことは言及されず、「少数民族」からの視点が欠けているとしか言い様がない。
この本の歴史的な「多民族国家 中国」の考察はよいが、現在の「多民族国家 中国」の現状は、全て中国共産党が発表するような「きれいごと」に終わっていると私は思う。
手ごろな入門書 ★★★★★
チベット暴動などで中国の民族問題に改めてスポットが当たったが、これは多民族国家の難しさを改めて浮き彫りにするものだった。この本の筆者は、多民族国家・中国の行方を比較的楽観視しているようだ。私は筆者の見通しに反対、もしくは無条件で支持する根拠ともに持ち合わせていない。歴史が積み重ねてきた惰性を慣性がある程度作用する可能性はなんとなく想像できなくもないが、果たして近現代の枠組みでそれが力を発揮するかどうかは、分からない。中国の今後を見守る上での手引きということで★五つ。
「中華」の伝統か、国民国家化か ★★★★☆
 中国の民族問題というといかにも複雑そうだが、その背景をわかりやすく説明してくれるような一般向けの本はほとんど存在しなかった。その意味で、歴史・宗教・現状と政策など幅広い視点からこの問題を論じたこの本は貴重である。ただ、民族問題に対する著者のスタンスはかなり独特なので、通常の意味での「入門書」として適当かどうかとなるとちょっと疑問が残る。
 本書における著者の独特なスタンスとは何か。まず、近代国民国家とは明らかに異なる「伝統中国」の統治のあり方を多民族共存のモデルとして高く評価している点があげられる。この観点からは、「近代化」の波にさらされることによって国民国家形成への圧力が高まり、結果としてしばしば漢族中心の民族政策が取られるようになった国民党政権期の中国は、そういった伝統からの「逸脱」としてとらえられることになる。
 本書のもう一つの特徴は、「外国からの干渉」こそが伝統的な多民族共存のかたちをゆがめる「元凶」であったととらえている点である。例えば第二次世界大戦前後におけるモンゴルや新疆における民族独立運動の高まりは、もっぱらソ連の自国の利益に基づいた介入によってもたらされたものとされる。現在の欧米諸国によるチベットなどにおける「人権問題」への干渉も、同様な立場から批判されることになる。 
 これらのスタンスからは、現在の少数民族をめぐる様々な問題は中華世界の「伝統」にかえることで解決可能だとする楽観的な姿勢がうかがえる。しかし、「近代化」こそが最大の課題になっているかにみえる現在の中国で、著者の理想とする脱・国民国家的な民族共存の空間が果たして実現しうるのかは疑問である。確かに力作には違いないのだが、よりバランスのとれた理解をするためには、他の本も併せて読む必要があるだろう。
民族問題理解の手軽な手引き ★★★☆☆
 本書は、多民族性という角度から中国の実態に光をあて、中華文明の成り立ちと民族性の関係や、新疆・チベットといったメジャーな民族問題の由縁と現状などを説き明かすとともに、中国少数民族の今日的状況、今後の問題、そして共産党政権による民族政策のあらましなどを紹介するものです。一般向けの新書としての性格上、この問題に詳しい方たちを唸らせるような深い内容ではないのかも知れませんが、中国民族問題への入門や、頭の整理をするために便利な本なのではないかと思います。
 著者は生粋の中国知識人であり、漢籍古典への造詣には相当のものがあるようです。そうした背景の下に、本書では、中華文明はマルチ・エスニシティをそもそもの成立の基盤としており、したがって諸民族間の共存共栄を眼目の一つとするものという主張が展開されています。思想史的には説得力のある議論だと思いますが、それが中国のチベット支配や新疆支配の問題とどのように関係してくるのか、この辺りの微妙な点についてももう少し敷衍して欲しかった気もします。
 また、本書でも、中国文明の少数民族を同化する力が指摘されています。民族問題の今日的状況からすれば些かナイーブな気もしますが、これは自国文化に関する自信の表れということで、善意に解することに致しましょう。
「中華」感が一変する ★★★★★
「中華思想」というものは、中華(漢民族)を中心とした究極の差別的思考であると思い込んでいた。

だが、本書によれば「東夷」「西戎」「北狄」「南蛮」という語も、そもそも差別語でも何でもなかったという。周辺民族は古代から中国にとって必要不可欠なものであり、単に「我々は偉くて、他の民族は野蛮」というだけの話ではないということだ。
このことを知っただけで、現代中国を見る目ががらっと変わる。
中国を語るのに必読の書だ。