ほのぼのとしたイラストと手書き文字による随筆的文章が、お互いを引き立て合いながら、つがいとなって話を展開させていく。この「画文」という手法を用いて、著者は日常で気づいたことや興味あることをつれづれなるままに書きつづっている。
著者がかつて住んでいた、「小さな駅前の和風旅館」的な味わいを持つ部屋、大好きな和風アンティーク、普段愛用している文房具、実家に帰ったときのこと…。平凡でふだん見落としてしまうような物や、古くさいと思われがちな事柄を、鋭い洞察力と奇をてらうことのないイラストで、新鮮な角度から見つめ直させてくれる。「OMEGA」のクリップや洗濯ばさみ、中国製の泥人形といった何の変哲もないものが、著者の体験談や分析により、魅力的で情緒あふれる「かわいいもの」へと変貌してしまうのだ。
表紙、扉絵の粘土人形も大田垣本人の制作。本書で「クラフト系は気分転換」と語るだけあり、ミニチュアサイズで作られた粘土細工の世界にものびのびとした開放感が漂う。疲れた心を和ませるのに最適な本である。(松本芹香)