ただし、本書は数学者が書いていることもあって数学的で、物理学的な色はあまり濃くありません。ですから、物理大好き☆物理命☆みたいな人にはあまり向かないかもしれません。(この点は他の本もある程度共通していますが…。)
しかし、逆に言うと、「ほとんど物理を勉強したことがないけども力学系の知識は必要。困ったなぁ…。」と密かに悩んでいる経済学や生物学などを専攻する人には、間違いなく最高の本です。経済理論や生物学の本などにも、巻末の付録に力学系の申し訳程度の解説が付いていたりしますが、今後の動向を考えると、やはり本書のようなものを読んでおいたほうが良いでしょう。教養・アイデアの種として、物理学の知識も得られますし。
また、数学専攻者は内容の厳密さ・抽象度の面で物足りなさを感じるかもしれません。そのときは、ちょっとばかり値が張りますが、スメール他『力学系入門』(岩波書店)を手にとると良いでしょう。これはほぼ完全に数学の本です。常微分方程式系の学習に最適です。しかも、忘れかけていた(?)線形代数の復習までお手伝いしてくれます。というか、ジョルダン標準形・S+N分解という愛のムチで、数学徒を徹底的に調練してくださいます。(笑)