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移民社会フランスの危機

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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移民社会フランスの「現実」 ★★★★☆
フランス大統領選真っ只中、移民政策が重要な争点の一つとなっている現在読むにふさわしい一冊。

「危機」という言葉にはそれまでのフランス社会が移民に対して開かれた社会であり、それが暴動を契機に揺らいでいるという具合があってはじめて成り立ちうる言葉だ…と指摘することも可能だが、おそらくそのようなことは著者は百も承知だろう。

だからこそ、単なる理想論ではなく、統計データが不足しているとはいいながらも著者はフランスのみならず、他のヨーロッパ諸国も含めて記載していく。その過程で見えるものはもともとフランスはあらまほしき移民社会ではなく、冷たい移民社会に過ぎなかったという「現実」だ。今回の暴動はその「現実」をフランス国民につきつけたに過ぎないが、その「現実」をフランス国民が受け入れることを拒否しているというのが新移民法に端的にみえるポピュリズム的現実ということだ。

著者が提示する処方箋と、記載している現実を天秤にかけたとき、著者のうめきが本からひしひしと伝わってくる。
移民同化能力なき移民国家の矛盾 ★★★★☆
81年にリヨン郊外でのムスリム系移民の暴動を契機に、仏政府はシテと呼ばれる事実上のゲットーを対象とした都市政策に乗り出すが、2005年11月の暴動(大抗議とでも言ったほうが正確であろう)により、過去の対策は徒労であり、事態は一層深刻化していたことが明らかになった。
本書は移民国家フランスにムスリム系移民が増加し、社会に受け入れられないままゲットーに事実上押し込められるに至った経緯を詳細に分析している。若者の失業問題にしろ、ゲットーの治安悪化にしろ主たる原因がムスリム系住民を同化する能力に欠け、フランス社会の一員として受け入れることの出来ないことにあると細かい指摘がなされている。
にも拘らず、問題を、失業問題や都市問題にすり替え、フランスに差別なぞあるはずはない(あるいは、そんなことは認めたくない)という固定観念から、ムスリム固有の問題が存在することを認識したがらないフランスの独善的思考回路に批判の矛先は向けられている。
最終的に著者は踏み込んでは書いてはいないが、原因は、人それぞれ固有の人格の保持者であるにも拘らず、移民を抽象的フランス人としか受け入れられず、「アイデンティティは、まずムスリム、次にフランス人」というムスリムを(おそらく毛嫌いし)差別するフランス人の心にある。フランスの偉大さに感動し、まず、フランス人、次に、世俗的ムスリムというムスリムが受け入れ可能な移民の許容範囲の限界なのであろう。
そのため、ムスリムにとってフランス国籍は単なる通行証でしかなく、労働許可証ではないのである。深刻な就職差別は簡単にはなくならないだろし、失業者はますます宗教に救いを求め、ますます疎まれることになりそうである。
2005年11月末に、警察長官が「毎日焼かれる車が100台程度になり、平時の台数になった」と事態の終息を宣言したのには呆れたが、その異常さにフランス人が気づくのはまだまだ先になりそうである。