もちろん、誰もが小説のような経験をできる訳ではないのだけれど、いつかあった、いつの日にかある、と思わせるような、物語が繰り広げられます。単純な小説なのに何度でも読めて、何度読んでも楽しいのは、楽しく、少し淋しく、懐かしく、誰もが経験して行くことを描いているからでしょう。
この小説集の良さは、「書いていてこんなに楽しかった小説は無い」という作者のあとがきに象徴されているように思います。最近の五木寛之は人生訓ばかり書いているようで、そんな作家だと思っている方も多いかと思いますが、この作家の真骨頂はこの本のような青春小説です。是非読んでみてください。