この本を読んで伝わってくるのは、筆者の電子政府自治体にかける熱い想いである。97年の経済危機を乗り切って、国民一丸となって電子政府構築にまい進する韓国と、工業化社会での成功体験からいまだ冷めえず、情報化社会の波に乗り切れていない日本とのコントラストが、定量的なデータとともに説得力を持って浮かび上がってくる。
　昨年韓国のソウル市役所に行く機会があったが、市民はほとんど誰もいなかった。それもインターネットを介した住民サービスが行き届いているとの筆者の説明を読むと得心がいく。今年都内区役所に行くと大勢の住民が何の疑問もなく並んでいたが、これほどまでに意識が違うもののかと考えさせられた。
　ともすれば我々は新たなことを学ぶのに欧米に目を向けがちであるが、学ぶべきものを持つものには素直に学ぶべきであり、戦前の影響で行政形態の近い韓国の事例研究は、日本の参考となるところも多い。易しい言葉と分かりやすいたとえで電子政府を熱く語る好著にて、ぜひ電子政府・自治体関係者に一読をお勧めしたい。