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脳死臓器移植は正しいか (角川ソフィア文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川学芸出版
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池田清彦氏の詭弁の方法を学ぶには良い書物 ★☆☆☆☆
池田清彦氏はそもそも構造主義科学論が専門である。本書は、各医学分野や倫理面に対する考察が不十分であり、また意図的と思われる非科学的な詭弁が多用されており、「移植医療」に対する見解書としては、まことに不十分な残念な内容の書物である。

池田氏は、本書内のいたるところで、非科学的な都合の良い事例のみを取り上げ、それが総論であるかのような書き方をされている。
たとえば、「自分はドナーになどなりたくないと言っていた医師がいる」ことが、多くの賢明な医師の総意であるかのような書き方をしているが、これは池田氏が伝聞しただけの話であり、事実であるかどうかの検証を池田氏は行っていない。
これはほんの一例である。読み進めるうちに気分が悪くなってくるような記載が随所にちりばめられている。

まことに非科学的なアプローチの積み重ねによって、本書は論理展開されている。それは以前某民法TV局で問題になった、”あるある”某の番組構成方法とそっくりである。この件が問題になった当時、この某番組の内容を科学的根拠も確かめずに鵜呑みにした人々を、「浅はか」であったと論じた新聞記事すらあった。
臓器移植を肯定する人や実際にかかわっている人々を、氏は「浅はか」であると本書内で断言している。(こういった言葉遣いは随所に見られる。肯定論者達に感情的議論を吹っかけようとしているのではないかと疑われる、良識のない言葉遣いである。)
学校で人に物を教える立場の人間としては、まことに不適格な言葉遣いではないだろうか。

以下に、池田氏の別の書物が、いかに非科学的で詭弁に満ちたものであるかを検証したブログがあるので、参考までにURLを記載する。
http://hechiko.cocolog-nifty.com/blog/cat2053441/

最後に、本書にあとがきに池田氏の友人である養老孟司氏の寄稿があるが、友人であるがゆえに、苦笑に満ちたような、フォローのかたまりの様な文章になっているところが面白い。このあとがき部分には星5つ与えたい。
制度運用への批判 ★★★★★
小松美彦の『脳死・臓器移植の本当の話』が、主に脳死判定基準の妥当性(脳の意識/人体の有機的統合性)と、移植現場における判定→移植の運用の妥当性の視点から、脳死臓器移植制度を批判していたのだが、本書は幅広い角度からこの制度が持つ欠陥を立証している。特に、医学的側面よりも、制度運用的な側面からシステムそのものを批判することに重点が置かれている。両書を併読すると面白いだろう。
臓器が圧倒的な希少財でありながらも市場で取引できないことが生むゆがみについては、骨髄等他の移植医療においても同様なのか検証が必要である。国家全体の医療への投資のバランスを考えれば、人工臓器、再生医療、あるいは脳低温療法などへの医療分野への投資が優先するとする意見は説得力がある。
著者が言うように、死は社会的コンセンサスのたまものであり、様々な情報を加味しても、未だ日本において脳死=人の死としての合意が形成されているとは言いがたい。しかし、おそらくなし崩し的に脳死臓器移植は推進され、定着するだろう。そこには政府、医療機関等が求める大きな経済の力が働いており、それを反駁することは容易ではない。ただし、本書が示すような多くの問題を含んで運用されている制度だという認識が、ドナーになるかもしれない私たちには必要である。
脳死移植の論点整理として最適 ★★★★★
そもそも「脳死は人の死か」という段階の議論で、移植法施行時に梅原猛先生が、いわゆる3兆候(心臓停止、呼吸停止、瞳孔散大)以外は人間の自然な感情として死として認められないと反論されていた記憶がある。
私自身も、死の基準さえクリアになれば、移植自体は現段階における医療技術の「次善の策」として認められるべきだと考えてきたし、またそれを疑いさえしなかった。

そこで手に取ったのがこの本。
様々な点から脳死移植を批判しており、論点整理の意味でも非常に良い内容だと思う。
中でもこれまで議論のテーブルにさえ載らなかったのが、脳死臓器移植を市場原理の観点から否定していることだ。
希少価値のあるものは高価になる。
この当然の理論が臓器移植には通用しない。
しかし、移植は純粋な医療行為であり、市場原理を持ち込むことはそもそもなじまない。
それに対し著者は、移植医、コーディネーター、医薬品メーカーが利益を得てコネクションを持っている以上、経済活動から切り離されるべき理由はない、と喝破する。
そして、現在光明が見え始めた再生医療に資源を注ぎ込むべきだ、と言うのだ。

それでも私は脳死臓器移植を支持したい。
現在の医療技術において「次善の策」としての脳死臓器移植は「仕方がない」。
もちろん近い将来、他人の身体を当てにしなくても良い再生医療が確実な技術となることが最も望ましいとは考える。
すばらしい。 ★★★★★
自分が脳死状態になった時に臓器移植をすることは、善いことだと思っていた。
実際、自分がもし脳死状態になったら臓器を使ってくれても良いかもと思っていた。
が、本書を読むとそれがかなり疑わしくなり、何も考えていなかったと痛感させられた。

筆者は、脳死臓器移植反対派で、その主張は明確である。
本書もとてもわかりやすく、事前の知識無しに100%理解できると言って良い。
他に脳死臓器移植反対派の著作を読んだわけではないが、本書を読む限り、反対派の中でも問題自体に突っ込む鋭さは非常に優れたものだと思う。
もちろん移植反対の方に偏っているわけだから、その点は考慮するべきだろうが、反対派の意見が知りたいならこれ一冊で十分だと思う。

ただ、内容と装丁デザインが合ってないのが残念・・・
移植を語るなら、まず本書を読むべし。 ★★★★★
臓器移植は、ドナーとレシピエントが非対称な医療であるが故に不完全医療(=金持ちしか受けられない不公平医療)であること。
それが国内では実験医療=無料であることから見えなくなっていること。
資本主義下の医療のキャナライゼーションの一環としてあるが故に「過剰医療」の一種に過ぎず、それに資源配分することは多くの救える他の命を軽視することになるが故に社会的に推進されてはならないこと。
従って、それは環境倫理・世代間倫理的に間違いであること。
そして、人間はいつかは死ぬものであり、どんな偉人でさえ、その人間の代わりはいくらでもおり、誰かを犠牲にしてまで生き延びる価値など万民に存在しないこと。

筆者の論点は明快であり、無条件に善行ゆえ推進すべきと考えさせられてしまっている医療関係者(=賛成派)や、何となく気持ち悪いから嫌だと感情的反対論を唱える一般人(=反対派)も共に真っ先に踏まえるべき書である。