It is not in gold to be oxidized
★★★★★
本書は覆刻版ではなく、原著を編集したものです。新かな、新字体が採用され、配列はローマ字順ではなくアイウエオ順。戦後世代には、このほうが読みやすいのは確かですが、原著のような国民的文化遺産はそのまま覆刻してほしかった。
それはさておき、中身を拝見。まず、「番目」をひいてみる。How manieth とあり、How manieth brother are you? How manieth president was Mr. Harding? などの訳例がそえられています。こんなの見たことも聞いたこともない。これは「新造語にて英語唯一の欠乏を補うもの」とか。つまり、英語には「何番目」に相当する単語、成句がないのですね。英語の神様ですら御存知なかったのですから。
原著は昭和3年の出版です。お世辞にも実務向きとは言えない。でも。基本的用語の訳については、いまだに類書の追随を許さないものがあります。たとえば、「飲む」をひいてみる。「渇しても盗泉の水を飲まず」、「酒でも飲ませて元気をつけてやれ」、「月給を飲んでしまう」、「飲んで苦労を忘れる」など興味深い表現の訳例が並んでいて、読むと楽しくなります。味わい深い労作です。
他の辞書の存在を無意味にする
★★★★★
こんなに古い辞書が、他の如何なる辞書の存在も無意味にするほどの光彩を放っているのはもはや奇跡に近い。中学から今まで種々の辞書を見てきたが、この辞書の前ではまるで太陽の前の蛍に過ぎない。
眼が痛い
★★★☆☆
この辞典の辞典としての評価にはまったく関係ない!とお叱りをうけるのを覚悟しております。読み物としても面白いこの辞書、ハードカバー版ですら40半ばの私の眼にはきついです。もうすこし読みやすいレイアウト、活字サイズにできないものかと愚痴りたくなります。値段が高くなっても分冊になてもかまいません。岩波の同著者による英和中辞典のほうがまだ眼に優しく感じられます。