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犬を飼う (小学館文庫)

価格: ¥480
カテゴリ: 文庫
ブランド: 小学館
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命を預かることの重さ ★★★★★
 うちの愛犬がまさにこんな状態になって亡くなった。大変な筋力を持つ大型犬で元気だったのが、老齢になると急激に筋力が衰え、足をうまく上げられなくなって引きずりながら歩いていた。足先から血が出たため、父は室内犬用の靴を買ってはかせ、ハーネスをかけて重い犬の体を引っ張りあげるようにして支えながら散歩させていた。犬はやがて老衰のため立てなくなり、車庫の毛布の上に寝たきりになった。介護する家族のストレスも限界に達し、この漫画のように家族の間でいさかいも起きた。やがてかかりつけの獣医師と相談し、薬で静かに眠らせて安楽死させた。葬儀は丁寧な納経と花で飾られた立派な棺、位牌、葬儀社の人が丁寧に弔辞を述べた後に遺族代表が火葬の点火と、人間の葬儀と変わらなかった。そして愛犬の死を悲しむ家族の悲しみも、人間の死の場合と同じだった。
ペット葬儀場で置いてあったパンフレットに書いてあったのは、軽い気持ちでペットを飼ってはいけないということ。犬という哺乳動物を飼うことは、亀や魚を飼うこととは違う。犬は飼い主に愛され、ともに暮らしたがっている動物である。長い年月をともにして、生き物を飼うことの重さを教えられた。家族で長期旅行に行くからと保健所にペットを薬殺に連れてくる人もいる今日、生き物を飼うことの重さをもっと知ってほしいと思った。
犬に、家族と自分の生涯を見て ★★★★★
決して犬好きではなく、また生涯でも犬を飼ったことは小さいときのほんの一時期でしかない自分にとって、本作品は、あくまで谷口ジローフアンとして、その一作品として手に取ったものだ。それにしては、引き込まれた。多いに多いに引き込まれた。
犬の一生は短い。だから、多くは、自分より若い時期の犬を飼って、やがてその犬は自分と同世代となり、同じ青春なりの時間を過ごし、そして犬は自分を追い抜き、老いて、自分を残して死んで行く。
人は、誰でも50を過ぎれば、その親なり肉親自身の老いや死に遭遇して、人生を考えだすものだが、こうして犬を飼う人は、そのことをもう少し手前で、早く感じるのではないだろうか。30代、40代、ひょっとすると20代以前に、こうして愛する家族としての犬の老いと死を看取って行くのではないだろうか。そこで、初めて家族、身内の死の避けざるを思い(若いときであればあるほど、自分自身の死ではなく、愛する家族の死をしとして最初に捉えるものだ)、人生の切なさ、いとおしさを学び、知るのではないだろうか。

こうしてみると、きちんと子犬から育て、その死を看取ったかどうか。ここに、単なるペットとしての犬好きと、人生を過ごす仲間としての犬の存在を認めるものと、人の厚みが随分違ってくるような気がするな。

犬好きではない自分だかが、そしてこれからもきっと犬は飼いそうにないけれど、とても豊かに人生を考えられた、佳作でありました。
表題作に、涙があふれた ★★★★★
 五篇収録しているうちの最初の作品、「犬を飼う」が実に感動的で、涙があふれました。14歳になった老犬タムと、主人公の私と妻が過ごした最後の日々を描いた漫画。足が弱ってきて、散歩も満足にできなくなるタム。やがて排泄物のたれ流し、寝たきり状態へと症状が悪化し、日一日と死に近づいて行く・・・。14年間、家族の一員としてともに過ごしてきた愛犬を、少しでも苦しみを減らして死なせてやろうとする主人公夫婦。読みながらあまりの切なさに、胸がいっぱいになった作品でした。
 そのほか、不細工な雌のペルシャ猫ボロと過ごす毎日を描いた「そして・・・猫を飼う」、母猫になったボロと三匹の仔猫の話「庭のながめ」、妻の姪っ子で中学一年生の秋子と過ごしたひと夏の出来事を綴った「三人の日々」、ヒマラヤのアンナプルナ登頂での神々しい生き物との出会いを描いた「約束の地」を収めた、文庫サイズの一冊です。
 五つの作品すべて『ビッグコミック』誌に掲載されたもの。「犬を飼う」が1991年6月25日号、「そして・・・猫を飼う」が1991年12月25日号、「庭のながめ」が1992年4月10日号、「三人の日々」が1992年9月25日号、「約束の地」が1992年7月25日号に、初出掲載されています。
 また、著者の谷口ジロー氏が表題作について語った巻末のあとがき「思い出すこと」は、表題作を読んでから目を通したほうがいいんじゃないかな。そのほうが、名品「犬を飼う」の余韻もひとしおって感じで、味わいがより深まる気がするからです。
犬を飼っていると・・・ ★★★★★
私が置き忘れたこの漫画を、お袋が読んで家の犬もこうなるのかと、大泣きしていたのを思い出します。お袋は普段漫画を読まない人なので、そんな人にも読めて谷口 ジロー先生の気持ちが伝わる名作です。
リアルで感情移入すること間違いなし ★★★★★
谷口ジローという漫画家を知らずに読みました。
犬の表情やしぐさや走るときの躍動感など、動物を飼った方ならついその感触まで思い出してしまうほど描写がリアルで、晩年の犬が衰えていく様子が真に迫りました。
ストーリーも飾りがなく、生きるモノへの慈しみの気持ちが自然とこみ上げます。
他の谷口ジローの作品も素朴で人間の本質を描いたものが多いようです。
その中でもこの一冊はオススメです。