ついに恋愛戦線に参戦!
★★★★★
停滞していたノロエミのコンカツ状態に喝を入れるかの如く参戦した湯瀬。しかしまあ、成り行きには至極納得である。だってここまでされて惚れない男はあまりいないんじゃないだろうか?父親入院の連絡を受けて身動きの取れない湯瀬に、コンサートを棒に振って仕事に付き合うノロエミ、夕飯の調達からお使いから、湯瀬にしか分からない仕事まで懸命にカバーしようとする彼女の姿にいつもの毒舌はどこへやら、家に帰りたくないと言えば、「子供みたいなこと言わないで」と叱ってくれさえする、こんな女性にいつまでも「正論ばかりで腹が立ちます」なんて言っていられない。最初から好意的な歯科医の速水に加え、ノロエミ本命の消防士、黒木も自覚はないものの明らかに意識し始めた様子で、運命待受女の割にニブニブなノロエミは、実はモテモテだという大変美味しい設定になってきた10巻、黒木弟を含めて今後の展開に期待度大だ。
しかし今回の10巻は湯瀬の心の旅編という意味でも非常に興味深い巻だった。
実家が地方の有名旅館で、母親は女将という家に育った湯瀬は、両親から甘えを許されずに厳しく育てられ、いつか両親に後悔させ、自分を必要と認めさせてやると誓っていた。それが今回の帰郷で、父親に謝られて、母親の女将としての大変さを目の当たりにし、大人として家族を理解する湯瀬には、ノロエミの素直さがうつったのか、読者としては湯瀬の子供時代を思うとほろ苦さを感じずにはいられないものの、実に心を打つ場面だった。女性読者の心を鷲掴みしたであろう湯瀬と黒木兄の一騎打ちか?などと今後の展開を予想するのも楽しい。