千年帝国の歴史と多様な地域の歴史
★★★★☆
第一部はビザンツ帝国の通史。(東)ローマ帝国がビザンツ帝国へと変わっていった時期
(六世紀)から話が始まる。ビザンツ帝国史=ローマ帝国衰退の歴史、という見解を退け、
ビザンツ帝国の諸相とその波乱に満ちた歴史を描く。政治史が中心だが、人物描写や逸話
も多く、歴史に精彩を与えている。
第二部はスラヴ人の中世史。「スラヴ人とは何か」との話から始まり、現在のバルカン、
東中欧、ロシアといった多様な地域の歴史を扱う。登場する「民族」の数が多いため、
一つ一つの「民族」の歴史は簡潔と言えるが、中世「東欧」の多様な歴史を知りたい人に
推薦できる。
この本のタイトルは「ビザンツとスラヴ」だが、それぞれの歴史が第一部・第二部と
独立しているため、ビザンツとスラヴの関係については充分にわからない。第二部著者
はこのことについて「あとがき」で触れ、ビザンツ帝国がスラヴ人(特にロシア)に
与えた影響を論じている。巻末には最新の参考文献も追加されている。