オスマン帝国とサファヴィー朝
★★★★★
第一部(p21-p274 著者:永田 雄三)はオスマン帝国史。範囲はトルコ人のアナトリア
への進出から、主に16世紀(スレイマン1世の時代)まで、そして、オスマン帝国が
「変容」していく16世紀以降の歴史を扱う。(帝国のその後の歴史は、シリーズ第20巻
世界の歴史 20 (20) (中公文庫 S 22-20)で扱われている。)
第一部は政治史も詳しいが、重点は都イスタンブールを中心とした帝国の社会、文化
に置かれ、オスマン帝国下の社会で当時の人々がどのように生きていたか、
が分かるようになっている。
第二部(p277-p465 著者:羽田 正)はサファヴィー朝史。範囲はサファヴィー教団の
時代から、主に17世紀(アッバース1世の時代)まで。
第二部もやはり政治史に詳しいが、重点は都イスファハーンを中心とする
サファヴィー朝の文化、社会に置かれている。特に第九章「それぞれの生き方」
では、あるクルド人リーダー、後宮の王女、インドに向かった宮廷医師、ある
カトリック修道士といった「珍しい」人々を取り上げ、彼等の生涯を通して、
サファヴィー朝の諸相を描いている。
オスマン帝国、サファヴィー朝に興味がある人に推薦したい。
原著は1998年出版だが、参考文献欄にはそれ以降の文献も収録されている。
そして、原著出版以降の研究動向などを踏まえた両著者の「あとがき」が収録されている。