持っているのにお薦めにされるため
★★★☆☆
高橋慶伸という広島カープの盗塁王となる選手。なぜか注目していた村上龍氏。福本でもないし、島田でもない。スーパーカートリオでもない。松本でもない。自分自身もプロ野球に一番熱が入っていた時代かもしれない。野村監督のID野球が一般化する前の時代。野球は力。長嶋、王でそれが終わった後に、ヒーローがいない時代。山本浩二か鉄人衣笠か。北別府、川口、大野、津田。広島はすごい選手が多い。
高橋が走ると何かが起こる。それがエッセイのようであり、人生を感じる。特に目立ったことをするわけでもなく、恋愛や個人的な悲劇の横をテレビかラジオから聞こえる実況に沿って高橋が走っている。登場する人も高橋のことを知らなかったりする。何か人生?の節目がある場面で、横で何も発言せずに高橋が走っているのだ。
別に高橋でなくても、福本でもいいのでしょう。メディアに出ていた高橋は、昔の高津投手の様子。飄々とした感じである。だけれども、なんだか高橋選手がいいのでしょう。人生の横に高橋選手が走っている。
龍バブル3部作の傑作
★★★★☆
W村上(もう一人は当然、春樹です)の龍のポップあり、暴力あり、精神病あり、でも牧歌的な作品。
ジャパンアズNO1(世界一としての日本)と言われ、空前の経済成長を遂げた80年代の作品です。
「あれ、世界一なっちゃた?」「我々は優秀なのだから当然でしょ」といった二律背反する感情を持ちながら疾走していった80年代を文字通り盗塁王の高橋慶彦というスター性をもった野球選手を据えて軽やかに描いた快作だと思う。
このまま日本経済が永続的に続くと楽天的な平和さが作品溢れていて、また逆に現在の日本を予言するように多くの人がその時代の早さにバタバタと倒れていき、鬱々とした不幸への火種を未来へつなげていることを予感していたような作品に思える。
「テニスボーイの憂鬱」「だいじょうぶマイ・フレンド」「走れ!タカハシ」は村上龍のバブル3部作と勝手に私は思っているが、「走れ!タカハシ」はそのなかで筆頭候補だと私は思う。
こんな村上龍も良い
★★★★★
1989年の短編集。
時代を感じさせない面白さだった。
村上龍はこんな小説も書けるからすごいし、面白いって思える短編集。
読んで全く損はない。
個人的にはオカマの話が最高に良かった。
電車の中で何度も笑いをこらえたけれど、最後はちょっと感動した。
この本から村上龍入門するのもありってくらい良い小説だった。
と言うか、「エログロ!」って思っちゃって村上龍にアレルギー反応起こしちゃってる人にお薦めする。
たぶんイメージ180度変わる。
まだ若い頃の村上龍の勢い、才能が凝縮されています。
久しぶりに良い作品に出会ったと思える一冊。
ちなにみ解説は吉本ばなな。
そんなところもイケてる。
盗塁王としての村上龍
★★★★★
村上龍のマスターピースの一作。
タカハシという かつて快足で鳴らした野球選手を題材とした実に軽妙な短編集である。とにかく笑える。これは余り言われていないと思うが 村上龍が 読者を笑わそうと思った時には 時折凄い作品が生まれるのだ。その好例が「69」であり 本作である。
村上龍という作者は本当に多彩な書き手である。その多彩さには 常に「軽快さ」が伴っているところが 爽快だ。それは 正しく 高橋慶彦という 一昔前の盗塁王のフットワークに似ている。村上は そんな自分の資質がはっきりと分かっている。だからこそ このような題名の作品を書いているのだ
最高に面白い
★★★★★
人生で読んだ「面白い小説ベストスリー」に間違いなく入る作品です。
さくさく読めて、笑えます。
本作は短編小説です。各ストーリーの登場人物は一般人。何かしらの悩みを抱えています。
各ストーリーの共通点は、どこかしらの場面で高橋慶彦選手が登場すること。あるときは賭けの対象、あるときは…。
今度はどこで、どのように高橋選手が登場するのかと思い、ドキドキ読めます。
読んで、絶対損はしません。