至宝の一冊・春秋五覇屈指の名君・重耳の生涯
★★★★★
流浪の覇者・重耳を描いた傑作です。
天に育てられるように、国から国を旅し、貧窮と飢えに襲われようとも忠臣に支えられ、祖国に帰国し覇をとなえる重耳。
春秋五覇の中でも、覇者の中の覇者と讃えられる所以は色々あると思いますが、
斉にあっては桓公に、宋では穰候、楚の成王に秦の穆公と、名を成した覇者に認められ、一目置かれたという点に恐ろしさすら感じます。
そういったエピソードを踏まえつつ展開される話は非常に面白く、まさに天啓を感じさせられる一冊です。
春秋の覇者の壮大な人生。宮城谷文学の最高傑作、星6つです
★★★★★
重耳は古代中国最高の名君のひとり。公子でありながら放浪を余儀なくされ、貧困と、艱難のなかを19年もさまよったうえで、ついに帰国を果たし、名政治をおこない、軍事でも諸国の盟主となり、世を正したのです。君主でいた期間はわずかに9年でした。
この本は詩的であり、格調が高く、宮城谷さんの前半期の集大成ともいえる大作ですが、イントロから”晋の国は、星のくにであった”。。。などと心にひびくことばでお書きになられており、とても読みやすく、一気に全巻を読破してしまいました。古代中国のとくにいわゆる春秋時代の歴史がとてもよくわかる副産物もありました。
大きな仕事をするかたには、天から試練が与えられる。それを乗り切り、よき臣下(僕らの場合はなかまや部下)を得たひとに、天命が降る、とおもいました。文学史に残る、大変に貴重な、そしてまぎれもない、大傑作です。
春秋前期のすべてがわかる
★★★★★
重耳とは中国春秋の五覇の筆頭とも言うべき名君・晋の文公のことです。
宮城谷さんの作品は決して主人公のみを描くことに終始することはない、
と言ってもいい。この『重耳』もその例に漏れず、
むしろ顕著にその作風が出ている作品だと思います。
重耳を描くために、まず晋国が興った歴史に触れ、
重耳の祖父を描き、父を描き、
重耳と同じ時代を生きたすべての人物を描いてると言えます。
この小説は魅力的な人物が山ほど出てきます。
祖父の称や、狐突、重耳とともに成長していく有能な臣下たち、
楚の成王や秦の穆公などなど。特に重耳の臣下たちはほぼ全員が春秋の名臣と言ってよいほどの人物に描かれています。
これを読めば、晋がなぜあそこまでの大国になったのか、
文公がなぜ覇者となりえたのか、
そして晋の史上最も良い時代を味わうことができます。
この重耳を読んだ後、宮城谷さんの『沙中の回廊』『介子推』『孟夏の太陽』などを読むと、面白さは倍増すると思います。ぜひ読んでみてください。後悔はしません。
必読!
★★★★☆
高校時代から世界史の担当教師が、面白いと
仰っていたような記憶があります。
今じゃ当然文庫になって販売しています。宮
城谷氏の作品は本当に、言葉がしっくりとくる
感覚があるんですね。「息を地面に落とす」等。
呼んでいて情景を思い浮かべやすいと思います。
一番印象的なのは、称(重耳の祖父)だった
かな?「政治はきれいごとだけではないが、き
れいに見せなくてはならない」という言葉があ
りました。
偉大なり宮城谷師
★★★★★
中巻で、主人公重耳の師である卜偃が、占いの結果についてこう説明するくだりがある。 「・・・晋は辺土の侯国で、国が乱れれば、必ず大国の干渉や指導を受けることになる」ゆえ、国が乱れても滅亡はない、と。鈍いわたくしはこれが何を意味するのか長い間気付かなかった。 ところが、「老人や女性などIQの低い層」に郵政民営化を宣伝し、党首討論では野党からの質問を無視し続け、反対派には刺客と称して政治の素人女性を送り込む、などと有権者をバカにし続けた党が何と憲法改正に必要な議席数を確保し大勝してしまった。 ついに日本国民は、自分たちがバカにされ切っていることすら、楽しむようになってしまったのか、と意気消沈していたわたくしに、この宮城谷師の何気ない一文が響いたのである。そうか、この「大国に挟まれた辺土の侯国」とは、晋ではない、わが国のことか・・・ ヘタに改憲しようとしても、米帝と中帝が必ずわが国に「教育的指導」をしてくるに違いない。この一文はまさにそのことを示唆しているのだ、ということが了解されたのである。 宮城谷師、偉大なり。 もちろん、ふつうの歴史小説として一級品であることも付け加えるまでもないでしょう。「三国志」の完成が待ち遠しいですね。