著者の考える「侠骨」とは。
★★★★☆
普通、「侠骨」と言えば、「反骨」、あるいは義を見てせざるは勇なきなりのような奮い立つイメージがあるが、著者の捉える「侠骨」はそうでない。「反骨」精神がうかがえるのは、大国斉をあっといわせた魯の書生を扱った第一話だけで、第二話は理不尽な父母にひたすら仕えた「孝」の人・俊(舜)、第三話は仁政を行い、周王朝の草創を補佐した召公、第四話は最後には秦の宰相となる数奇な人生を歩んだ百里奚を扱っており、戦いの中で弱きを助け強きをくじくという狭い意味に「侠骨」をとどめていない。
仁者の気骨、というもっと大きな意味で著者は「侠骨」を捉えていることがわかる。即ち、本書に収められた4短編は、いずれも「仁」者を描いた作品と評することができる。「仁」という概念を理解する手助けとなって、読後さわやかな気持ちになれるお薦めの好短編集です。
仁人の気骨
★★★★☆
中国古代史をテーマに以下の4作品が収録されています。
「侠骨記」文化で一流、軍事で二流の魯国の書生曹カイが管仲を相手にする話。
「布衣の人」粗衣の青年が家族を率いながら国を開いていく話。
「甘棠の人」太公望と召公とのかかわりにスポットライトが当たっている話。
「買われた宰相」百里渓とその友人の物語。
どの作品も爽やかな読み応えで、中国古代史を知ってる人も、知らない人も楽しめる作品です。
短編集
★★★★☆
4つのタイトルが収録されています。
侠骨記もおもしろいですが、
百里奚を描いた買われた宰相が
特におもしろかったです。
思いのままにならない彼の人生が
思わぬ形で買われ、生かされていく。
人生の味わいの深さが感じられます。
オーソドックスな中国歴史小説
★★★★☆
史記その他に載っている故事を作者なりに肉付けし膨らました作品集です。初期の作品であり、ディープな中国歴史小説ファンには、今現在の筆者の筆力と比較して物足りなさを感じる人がいるかもしれません。しかし、4編の短編で構成されており、ちょっと難しい表現はあるものの、オーソドックスでとても読みやすいです。題材は有名な話ばかりなので、新奇性にかけるかもしれませんが、私はオーソドックスなものも好きなので星4つにしました。
清涼感のある話
★★★★★
著者は宮城谷さんですから,当然中国古代の歴史小説です。長編ではなく,文庫で50頁から100頁程度の作品が4つ入っています。描かれる人物は,魯の曹カイ,帝舜,周王朝建国の功労者召公,秦の宰相百里奚の4人です。
どれも中国古代の人物ゆえ残された資料は少なく,その史実は細かい点まで分からないかと思います。しかし,その資料の少なさこそが宮城谷さんの腕を振るうチャンスになっているのは,他作品と同様です。宮城谷史観ともいうべき歴史が展開されています。『侠骨記』と題されるように,どの人物もその人なりの「骨」が屹立していて,読み終わってからすがすがしい清涼感の残る話ばかりです。