子供のイマジネーションを育てる最高の児童書
★★★★★
昔、幼稚園の本の即売会で母が買ってきて、しばらくこの本は子供部屋の本棚に置き去りになっていました。
1年生になったある日、なにやら難しい話なのかと恐る恐る自分でページをめくった時から、私はすっかりこの本に引き込まれ、かなり長い間、一番のお気に入りの物語として抱え込んでいたものです。
この本の魅力は、語り手である年取ったばあやが、屋根裏にある子供部屋で暖炉を前にやぶれた靴下をかがるという、一見、当時のイギリスではありふれていたであろう光景の中から、世界中を何百年もの時代に渡って舞台にした、ばあや自身の不思議な体験談を一つずつ語るという設定にあります。
古代ギリシャからインド、中国、ドイツ、イタリア、スペインなど、それぞれの背景の特徴をかいつまんでモチーフが織り込まれ、ローレライやネプチューン、王様、お姫様もいれば、パン屋のおかみさんや庭師の子供やいたのかいなかったのかもわからない小さな赤ちゃんなどもでてきて、素朴な語り口ながらも、心に様々なイマジネーションが広がったのを中学生の親となった現在でも鮮明に記憶しています。
私が薦めるよりも早く自分で手に取りいっきに読みふけってしまった娘を見て、あらためてこの本の魅力を推薦できると実感しました。
本のカバーの絵が地味なので、中表紙の絵と同じものだったらいいような気がします。
映像に限定されない自分だけの想像を広げられる本ならではの醍醐味。
それを手助けする挿絵の絶妙さを兼ね備えた素敵な物語です。