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柳生非情剣 (講談社文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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ええ、柳生ってそうだったん?! ★★★★☆
正直な話、ちょっと驚いた。
柳生十兵衛とか宗矩(むねのり)って、普通の時代劇ではイイひとと言うか、主役はる人物ではなかったのかぁ。。。
んーん、なんというか、柳生一族って、こんなどろどろしていたんですか。
特に、江戸の柳生。
びっくりしたなぁ。

とまぁ、何というか柳生一族の思いっきり入り組んだ、特に終わりと江戸柳生の関係とかが中々ドラマチックに描かれています。
しかし、あんまりいい人が出てこないんで、何というか、うーん、テレビの時代劇とは、随分違うのだなぁ、とちょっと変な感心。
なお、剣劇シーンはさすがです。相当の迫力で、読み応えがあります。
三兄弟の確執。 ★★★★★
30歳の頃に読んだ本。十兵衛・友矩・宗冬の柳生三兄弟の
確執が、若い頃の自分には、特に興味深かった。
「剛」の剣を振るう十兵衛が、必ずしも最強ではなく、
美剣士友矩の「柳の剣」に受け流されるだけで無く、
「能」マニアで、今風に言うと、幾分オタクっぽい宗冬の「ステップ」に
知らぬ間に間合いを詰められて一撃を喰らい、
十兵衛が気を失っている内に、「遁走・トンズラ」されて
仕舞う。

十兵衛が主人公と為る話では、柳生の里に戻って「秘剣」を
マスターしようとするものの、里の者達には「御上品な若殿様の
剣術の御勉強」と、軽くあしらわれて仕舞う。
「誰も教えてくれぬの為らば」と、里の近くの山に篭って
一人で荒修行をしようとしても、身の回りの世話係の若い娘「きぬ」にまで、
町育ちの「御殿様に出来る事では御座いません。」と諌められる。
この話では、最終的に十兵衛が「無刀取り」をマスターするのだが、
「真剣白刃取り」の様な、多分に「演出的」な技ではなく、
もっと、ずっと地味な技であり、映画他の映像作品には
向きそうも無い。作者隆慶一郎は、このシーンを
スローモーションの様な克明さで、極めて具体的に
描いている。相場師の目で見ると「売買自体は地味なもの」と言う
林輝太郎氏の一連の著作に通ずるものがある。

三兄弟の中では、見事にサヴァイヴァル・スキルを
身に付けて、「臆病者」と言う世評など、「何処吹く風」
と、「能」三昧で、生き残った宗冬が、最も
私には、興味深く、そして、学ぶ所も大きい。
黄昏のはかなさ ★★★★☆
"黄昏が降りて来ている。
遊女たちの弾くみせすががきの音が郭の中を満たしている。店先の提灯に火が入った。
かわたれどきと呼ばれるこの時刻ほど、吉原の華麗さともの悲しさを同時に感じさせる時はない。"

この、はかなさとポップさが、隆慶一郎の醍醐味だと思う。が、本書は表題の通り、柳生にまつわるエトセトラということで終始陰惨。陰惨さの中に香る、気丈さ・諦めなどは十分に楽しめるが、苦いものは苦い。柳生のメンタリティにポップさは無く、ゆえに本書にもそれは無い。ただただ、はかない。

読者のパワーが弱っているときに読むと予期せぬダメージを負う可能性があろう。気力と相談して、楽しまれたい。
異形集団“柳生一族”の魅力 ★★★★☆
 「柳生非情剣」があらかじめ連作として書かれたものではなかったことが、山口昌男の解説を読むとわかる。それにしてはこの短編集、まるでそれ自体が柳生一族であるかのような、全体としてのまとまりを持っている。「個」としても際立ち、“柳生”という「組織」としても明らかにひとつの形を成している。各短編ごとに、主であった柳生宗冬が脇となり、脇であった十兵衛が主となる。常に誰かが総帥なのではなく、時と場合に応じて、また見る立場によって主役は入れ替わる。しかしながら、それは“柳生一族”であるという一点において変わりはない。隆慶一郎だけではなく、多くの時代小説の書き手が、そして読者が「柳生一族」に惹かれるのは、山口昌男の言葉を借りれば、それが異形の者たちの集団であるという点だろう。戦いで睾丸を無くし悟りの境地に達した柳生兵助の凄絶、能に溺れ剣も二流と卑下した宗冬のその実一族に恐れられた凡庸ゆえの手強さ、片端となり実父と妻の密通に耐えつつ異形の剣を編み出した新次郎の精神の強靭さ...中でも家光との愛に生きた柳生左門友矩は、愛に生きたが故、飛びぬけた剣の才を持ちながら儚い生涯を終える。しっかし、美貌の剣士左門、どうしても左門豊作がそのイメージの邪魔をする。これって名前の罪だろう。
これ一冊で柳生はOK ★★★★☆
”これ一冊で柳生はOK”と言いたいほどの密度の濃さ。
この短編を読むと触発されて他の柳生物も読みたくなりますが、結局最後に柳生はこの一冊に凝縮されていると気付かれるでしょう。