わかりやすいという意味ではこれより優れた本を探すほうが難しい。
社会人は当然、学生であっても数学に厳密な証明を要求される人など、
ほんの一握りであろう。その意味で、使えてナンボの
微分方程式入門書としてお勧めできる。
脇に初等微積分の教科書を置いて復習しながら
粘り強く読めば、たいていの人は理解できるはずだ。

しかし、このシリーズ全般にいえることだが、
演習問題が決定的に不足しているため、
本書を読んだだけでタイトルの通り、
「今日から使える」わけではない。
演習問題集を用意しなければ意味が無いであろうことを
付け加えておく。

微分方程式というと堅苦しそうだが、ざっくばらんな書き方で、思ったより数段面白かったし、式の導出が「ばか」（失礼！）丁寧でわかりやすかったので、星５つ！
応用もこれでもかというほど示されているから、微分方程式を学ぶモチベーションが高まったのもプラス。

「具体的な状況に合わせて微分方程式を立て、それを解き、結果を吟味して遊ぶことにより、微分方程式への導入を図る」
　という教育的な精神を貫いて書かれた、日本にたぶん2冊しかない貴重な微分方程式入門書の一つです。もう一つはかつて日本評論社から出たバージェス＆ボリー『微分方程式で数学モデルを作ろう』（1990）という本で、こちらも隠れた名著です。いずれも物理・化学・社会科学と話題が広いのが面白いです。

　私は物理をやりに大学に入ったつもりですが、そこで教わる学部の数学というのはたいてい面白くありません。微分方程式論の講義で、やれリッカチだクレローだ解の存在と一意性だ、とごちゃごちゃ教えられても、数学屋さんの卵の人々以外にはさっぱりわからないし興味もないのです。
　そんなのはもう沢山であって、私はもっとこう具体的なといいますか、物理的に意味のある記述が欲しいのです。物体の軌道を決定するとか、電流の時間発展を見るとか、そういった合目的的なことに数学を使いたいのです。
　講義がその必要を満たしてくれない以上、こういう「数学屋さんの目には触れないであろう隠れた好著」を買って自助努力するしかないわけです。

　日本評論社のバージェス＆ボリーは、向こうの高校の先生が書いただけあって、クセがなくソツのない本です。こちらは読み物的な面白さも持ち合わせながら自由奔放な文体で書かれており、そのノリには賛否両論あり得るとは思います（個人的には大好きです）。しかし、現在の大学の数学教育に欠けている貴重な理念を体現したことに敬意を表し、星5つとさせていただきます。

具体的な例題に対して、立式過程から解の導出まで行い、
さらに解の吟味までコッテリ行うので至れり尽くせりの
本だと思います。
文体にはややクセが見られますが、読み物として純粋に面白いです。
また、基本は外さないながらもマニアックな部分も多いので
読者層は広めではないでしょうか。

ただし、基本的な数学公式(arcsinの積分)など、
天下り的な記述が散見されるので初学には向かないでしょう。
また、練習問題が少ないのでマジメに勉強されるかたは
普通の教科書で問題を解かないと本質的な理解は難しいと思います。
後半部はかなり高度な内容(量子力学など)も含みます。
高度な内容になるとやや筆が速くなるので、自分で手を動かして下さい。
この値段と厚さでよくここまで書けるな、と感心するぐらい
よくできた本だと思います。
「今日から使える」は言い過ぎの感は否めませんが。