一言でいうと、「脳の発達と子どもの行動や学習との関連を調べている発達神経心理学の研究」についての本である。 ただし、その字面から連想される難しさはない。語り口はとても平易でしかも身近だ。
著者は神経心理学・認知心理学の研究と臨床に携わっており、また一児の母でもある。 彼女のスタンスは、 「親や学校の教育方法を子供の実状にいかに合わせるか」 というものである。
子供の才能を伸ばしてやりたいと思っていない教育者（親・教師含む）はいないだろう。 どの教育者も、懸命に子供の方を向き、よかれと思った教育方法ではぐくもうとする。 おおむねうまくいく…だが、同じ親から生まれ、同じ親に育てられた子供であっても、同じ方法ではうまくいかない場合がある。 なぜか？ 　何かが間違っているのだ。 けれども何が間違っているのかわからない。教育者か？　子供か？　それとも教育方法か？
この本は、そんな問題を抱えた（ように見える）子供の教育者に読んでほしい。 たくさんの、時には何らかの問題を抱えた子供たちに関わってきた著者が、データの裏づけと優しさとに満ちた問題の捉え方、そして解決方法を教えてくれる。 問題はそれほど大きいものではないのだ、ということも。
うちの子供には何の問題もない？　それは結構なことだ。ではその子の才能をもっと伸ばしてやるためにはどうすればいいだろう。子供の世界をもっともっと広げる方法を、著者は教えてくれる。アドバイスはとても具体的だ。読めば明日から試したくなるはずだ。
非常に良質のハウツー本である。