ちょっと待った! 早期教育を始める前に!
★★★★☆
「こどもが1歳になったから,早期教育をはじめて,子どもの将来のために能力を伸ばしてあげよう」と安易に考えているあなた.ちょっと待って! アメリカの発達心理学者が書いたこの本を読んでから,早期教育を始めるかどうかを考えよう.この本の主張は3点.(1)早期教育の効果に科学的な根拠がない,(2)こどもに悪影響が出る可能性がある,(3)遊びの中に知性を育むヒントがある,としている.ちなみに,この本の原著タイトルは「アインシュタインはフラッシュカードで教育されなかった!」.つまり,天才はだれも早期教育を受けていないということだ.早期教育に関する悪徳商法には気をつけよう.高額のグッズを買うよりも,あなたの貴重な時間をこどもに費やそう.そして,高額教材をこの時期に使わず,将来の教育資金にまわした方が賢明なように思う.
じゃあ、親は何をすればいいのかを具体的に教えてくれる本
★★★★★
この本が最も伝えたいのは「遊び=学習」、つまり子どもの知能は遊びを通してこそ伸びるということだ。でもそれだけなら、じゃあ、子どもをただ遊ばせておけばいいんだということになり、わざわざこの本を読む必要もないということになってしまう。でもそう言われても親にしてみれば、どうやって子どもを遊ばせればいいのかわからないというのが本当のところではないだろうか?
この本が他の育児の本と違うところは、各章ごとに「子どもの隠れた能力を発見する」「教えるチャンス」といったコラムもあって、今、自分の子の能力がどの段階なのかを確認できる実験、また子どもの能力を伸ばすために実際に何をすればいいのかを具体的に紹介してくれていることだ。単なる親への漠然とした励ましなどではなく、本の中で紹介されている実験や家庭でできるレッスンを自分の子にしてみれば、いやでも結果をすぐに目にすることができるわけだから、育児真っ最中の親にとってこれほど役に立つ本はないだろう。
もちろん、学者によって書かれた本なので、本の主張の根拠は膨大な実験・調査データに基づき、くわしすぎるくらいくわしく説明されている。巷にはびこっている幼児教育に関する4つの神話(迷信?)である「早ければ早いほうがいい」「時間を一瞬たりとも無駄にしてはいけない」「親は子どもの知能の設計士」「子どもは空っぽの容器」が、いかに真実とはかけ離れているのか、この本を読めば納得できるだろう。