自然にある流れの現象について、ある高校生に生じた疑問に、地球流体の研究者が丁寧に応える展開になっています。はじめにこの本を読んだ時、高校生の疑問に対する研究者の答えは「そっけない。あるいは、解説になっていない。または、著者の意図が伝わりにくいのでは？」と思いました。しかし、何度か読むと極めて重要な情報がぎゅうぎゅう詰めになっており、自分の理解の浅さに気付かされました。もっとも面白かったのはコリオリ力、低気圧、高気圧について記述された章で、これらがいくつかの角度から説明されており理解が深まります。流体研究者の心構えや哲学も（時折）書かれており、著者の世界観が少しだけ見えるような気がしました。

はじめてこの本を手にしたとき今まで読んだどんな科学の本とも違う、小説のような世界へ誘われました。まず表紙の絵が興味を引きます。ティーカップなのですが、そこに地球に存在する中規模の渦の秘密が隠されていたことを匂わせているんだと思います。ごく最近まで明らかでなかった中規模渦の衰退メカニズムについての秘密がかき混ぜたティーカップのそこに集まった茶葉に隠されていたなんて、面白いですね。