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鬼譚草紙 (朝日文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 文庫
ブランド: 朝日新聞社
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   陰陽道ブームを巻き起こした「陰陽師」シリーズで、伝奇小説に新たな1ページを開拓した夢枕獏。そんな彼が、イラストレーター・天野喜孝と、同じ舞台、同じテーマで作りあげたコラボレーションが、本書である。小説家が3つの短編を書き、画家がその世界をビジュアル化した。天野は、夢枕の「キマイラ吼」シリーズでイラストを担当して以来、夢枕の作品世界を具現化するのになくてはならない存在だ。今回は、黒を基調にして、朱色や紫色を巧みに配し、平安時代の夜の闇にうごめく鬼や妖怪、そしてその闇に浮かびあがる妖艶な女性たちを描いている。

   あとがきにもあるように、収められた短編は、いずれもが「Hな譚(はなし)」であり、全編官能小説といってもいい。肉欲とは無縁なはずの聖が、ふと出会った人妻に耽溺して、矢も楯もたまらず女犯に走ったり(第1話)、鬼から絶世の美女を勝ち取ったにもかかわらず、欲情を抑えられずに彼女を不意にしてしまったり(第2話)。最後の第3話にいたっては、実在の漢学者にして歌人の小野篁を主人公にして、堂々と「近親相姦」を描いているのだ。登場人物たちは、たしかに愛欲まみれなのだが、彼らの燃えさかる情炎の中に、人間が生来持っている業のようなものが垣間見えて、哀れを誘う。

   エロチックで少しかなしい物語が、夜の帳の中で淫靡(いんび)に繰り広げられる。夢枕の文章と天野の挿絵が、読み手にリアルで生々しい「性」の感触を与えてくれる。 (文月 達)

「陰陽師」ファンならよんでおかなくちゃ。 ★★★☆☆
 今昔物語・宇治拾遺物語・古今著聞集・篁物語等に材をとった、鬼と人との物語。染殿后と紀長谷雄と小野篁の話です。著者の夢枕氏とイラストの天野氏が「なにかHな譚(はなし)を」と描き始めたそうで、少し官能的な描写が多いです。いやらしい感じはないのですが子どもには向きません。
夢枕獏の平安の闇 ★★★★★
 ゴールデンコンビと自分の中ではかなりそう思っている二人の合作中。もともとは獏さんの山小屋で、獏さんのやいた陶器に絵を描いてそれで話を即興すると言う豪華な一席から生じた短編集。そのテーマはHでえげつない話。
 とはいうものの、昔の魔獣狩りとかのようなものではない。獏さんが達した今の文章で書かれている物語は、確かになやましいものであるものなのに物悲しく思える。そう、それはどこか陰陽師の異話であるように平安に招いてくれる。
風流な官能時代劇 ★★★★★
エロティックで非常に官能的。なのに、卑しさ汚らわしさを感じさせずに風流な時代劇の物語の中にグイグイと人を引き付ける世界観。読み終えるには数日掛かるであろうと思っていた最中、あっという間に読破してしまいました。更に付け加え天野喜孝先生の絵が又、妖艶で事の外美しく物語をより一層強く引き立てている。読後の焦燥感がとても良い。
愛おしいのは、鬼は人、もの悲しいのは、人は鬼 ★★★★★
陰陽師で快調にとばしている夢枕獏が、「キマイラ」シリーズなどでタッグを組んでいる「絵師」天野喜孝とのコンビで編んだ、妖艶な平安絵巻。
鬼が人と交わり、あるいは語り合いすることができた、平安京。小さなエピソード(たとえば、源博雅・・・陰陽師シリーズで安倍晴明との無二の親友)などを盛り込みながら、夢か現かというような奇譚-鬼譚が三編。

物語は獏の話が美しくも悲しい男女の話。もちろん天野の絵がたくさんおさめられており、どちらもとても、相乗的にエロティック。

「ああ、彼(彼女)に逢いたいなあ、一緒にページを繰ったら思わず唇を寄せ合うだろうなあ」という気持ちにさせる物語ばかり。

「染殿の后(そめどののきさき)」の話、「紀長谷雄(きのはせお)」の話、これは鬼と人との話。

「染殿の后(そめどののきさき)」の話、「篁(たかむら)物語」、これは人と人が鬼になる話。

私の一押しは、「染殿の后(そめどののきさき)」の話。モティーフが桜花なので、想像すると、たとえ鬼の話でもきっとものすごく美しいと想像するのでした。

平安の都には確かに鬼がいたのだと私は思います。理系の私が非科学的なと言われそうですが、その後の戦乱の時代から人が鬼になるので、鬼が鬼でおれなくなり、そして物の怪がなくなったのだと。そしてその後は人魂だけが残ったのだと。

「紀長谷雄」の話、は「長谷雄草紙」という絵巻物が現在まで伝わっていて、その話のリメイクです。「長谷雄草紙」については、「鬼のいる光景-「長谷雄草紙」に見る中世-」(角川書店)に詳しいです。「陰陽師」から日本の中世に興味を持った方にお薦めです。