著者が長年携わってきた機械設計の研究・講義においては、新しいものを創造する過程で失敗がつきものである。その仕事を通じて失敗の扱い方にこだわりを持ちはじめた著者は、官民協同で失敗のデータベース作りを行う「失敗知識活用研究会」の活動などを通じて、現代社会のあらゆる分野において失敗に学ぶことの必要性を感じるに至り、その考えやノウハウを体系化してきた。
本書の内容は、失敗を取り込んだものの考え方、組織運営、社会の考え方の3つに大別され、それぞれ具体的にまとめてある。たとえば「失敗を生かす組織運営」の章では、もんじゅの原発事故を「局所最適・全体最悪」の例として挙げ、失敗対策におけるトップダウン方式の重要性を説いている。
「この本を読んで、実際に仕事を進める上でのヒントを見つけていただけたならば、筆者としてこれに勝る喜びはありません」とのこと。確かに本書には、「スタンド・アロンには決してならないこと」など、仕事をするうえで頭の片隅に置いておくと便利な情報が満載である。また、読むと失敗に対する考え方が前向きになり、自然に新しいことに挑戦する意欲と勇気がわいてくる。これも本書の魅力のひとつであろう。(加島有理)