こんなゴージャス、久しぶりかも
★★★★☆
これでもかと貴族的資質に恵まれながらマフィアの掟で大切に育てられた帝王と、
生粋の日本人ながらイタリア生まれイタリア育ちのおまわりさんとの復讐から始まる愛。
マフィア物の王道でしたが、それにしてもゴージャスでした。
実相寺さんのイラストがぴったり。
長い金髪、ラテンとゲルマンのいいとこどりの彫刻のような美貌もさることながら、
外科医でチェスのグランドマスターでピアノも絵画もプロ並でオペラやバレエを愛する芸術愛好家。
およそ考えうる限りのスペックを備えた上、さらに現実離れした狂気が魅力を深めてました。
自分と同じ顔をした双子の弟に命を狙われるたびに犯して歯を抜くとかね、すごすぎる。
そして味覚がなくてショートスリーパー。
しばらく忘れられそうにない帝王様っぷりでございました。
対する日本人くんは、国家警察に入ることを夢見る正義漢。
父母を殺され、帝王にたてつくも、面白がった帝王に、その場で殺されるかアマンテになるか選択を迫られて後者を選ぶと胸に所有のピアス、陵辱の日々。
しかし周囲を敵に囲まれ、誰も彼もが裏切る現実を見ているうちにその孤独と孤高と独特の思考回路にすっかりほだされて愛してしまうのでした。
神と崇められているくせに実質的には誰も味方じゃないなんて、そりゃ「自分が味方してあげないと!」って気分にもなりますわ。
日本人くんが、特に美貌とか特殊能力を持っているわけではなくて、何も守るものがなくなったがゆえの捨て鉢ともいえる心の強さと復讐心の純粋さを愛でられるという設定に説得力があってとてもよかったと思います。
オペラやバレエで味付けされていたけど、「トリスタンとイゾルデ」を背景に愛と憎しみを語らせるあたりは濃密なやりとりとそのわけのわからない執着っぷりに引き込まれました。
逃亡先がブエノスってことは某シリーズともリンクしちゃうんでしょうか?
「この聖なる束縛に」のアルフィオや男爵が登場。シリーズ化に期待しちゃいます。