短編小説がとても良いです!
★★★★☆
視線の静かさと秘めたる覚悟のようなものがにじみ出てくるかのような、一見なんということのない素朴な、素直な文章に感じますし、すらすらと読めてしまうのですが、すらすら読むのがもったいなく感じさせる何かが文章にあり、つい読み返したりしてしまいます。自身の身の回りのことから、戦争中の事、あるいは趣味の絵、釣りの事まで、題材は何であっても視線はあくまで低く、読ませます。前回読んだ随筆集が大変良かったのでこの作品を選んだのですが、この随筆も良かったです、ある意味想像通りの素晴らしさでした。
が、新鮮な驚きだったのが、最後に2つの小品、短編小説というか、スケッチというか、または私小説ともいえる文章があるのですが、これがとても素晴らしかったです。パリに留学している書き手が結婚してプロヴァンスにいる友人をバイクで訪ねる「プロヴァンスの坑夫」、友人と2人でヴァカレス湖(私も何処だか分かりませんが、ヨーロッパのどこか?と推察しました)近辺を旅している日本人の私と物知りの速水との会話の妙の話し「サント・マリー・ド・ラ・メール」どちらもセンチメンタルだったり青臭い話しだったりする部分をあまり感じさせず、淡々と語ることで得られる静けさと透明感が素敵な作品です。
次は小川さんの小説を読んでみようと思わせる本でした。堀江 敏幸さんがお好きな方に、また小山 清作品が好きな方にオススメ致します。少し前までいらっしゃった地元に密着した「文士」の方の文章、とても惹かれます、オススメ致します。