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八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,575
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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第一次世界大戦がなぜ発生したかを追う最高のドキュメンタリー ★★★★★
 オーストリア皇太子暗殺が第1次世界大戦を生んだ過程を記す上下2巻のノンフィクションである。当時の各国の状況と、2ヶ月で戦争に勝利する計画のドイツの進撃が止まるマルヌ会戦の前夜までの1ヶ月を詳細に記述している。

 ドイツには、クラウゼヴィッツ流短期決戦の戦争計画があった。シェリーフェンプランである。ロシアかフランスのどちらかが陸軍動員を開始した場合、ドイツ陸軍動員から4週間でフランス軍を壊滅し、次の2週間で反対側のロシア軍を壊滅するという、ドイツ魂溢れるあまりにも厳密で融通の利かない計画だった。

 フランスの対ドイツ戦争計画は、40年前にドイツに奪われたアルザス・ロレーヌを奪い返す第17号計画である。

 暗愚なロシア皇帝がオーストリアを恫喝するために実施した陸軍動員が不審を呼び、ドイツの皇帝と参謀本部はシェリーフェンプランを発動させ、同時にフランスも第17号計画を発動させた。
 ドイツはベルギーを蹂躙しフランスを焦土と化して北からパリを目指す。フランスは一直線にアルザスを目指す。まるで回転ドア。

 両者とも、計画停止・変更と計画作成を比較し、計画作成のコストを捨てることができずに、壮大な計画を実行してしまった。しかもドイツは政治的メンツから、計画の大前提を覆すほんのわずかの修正を行ってしまう。これが命取り。

 計画作成、実行、変更の難しさを数百万の命と引き替えに実証した事例研究とも言える。
詳細かつ繊細 ★★★★☆
 第一次大戦の開戦から、拡大を描いたルポとしてはこれに尽きるのではないかと思われます。
 ただ、残念なのが冒頭に西部戦線、東部戦線の概略図が付いているものの、それ以外は文中に図版、地図が添付されていないこと。かなり予備知識で欧州の地理、地名、当時の欧州政界、王朝に登場する人物の相関関係などを持っていないと、各国軍の配置や前進方向、戦域の地形などがなかなかイメージできず、なぜ軍の移動や転用の問題を引き起こしているのかなどが理解できにくいと思います。
 章ごと、転換点ごとに詳細な図版があれば、より理解が深まるのに。ということで星は一つマイナスです。内容的には星5つですが。
いわずと知れたケネディ推薦本 ★★★★☆
歴史のWhyではなくHowを書くと著者自身が述べているように、手堅く細
かく、どのようなプロセスを経てヨーロッパ列強が第一次世界大戦を起
こし、そしてその後の四年間の塹壕線の端緒となったマルヌ会戦へと収
斂してくかを書いたストイックな労作。評価は下すけど批判はしないと
いうスタンス。ヨーロッパ列強が故意に起こしたというよりは、列国間
の誤解や不注意や過信といった、しょーもないぐらい人間的な要素によ
って引き起こされたというのが彼女の結論。
ピューリッツアー賞受賞。
国際舞台の人間模様 ★★★★☆
 第一次世界大戦というスケールの大きい国際事件の裏側に隠された人間模様の叙述、その前編。

 上巻は開戦に至る背景から緒戦の開戦後ドイツの進撃までを、ドイツ国家元首たるカイゼルや参謀総長モルトケ、イギリスは派遣軍司令のウィルソン卿、後の首相チャーチル、フランスは大統領ポアンカレ、陸相メッシミ、陸軍総司令官ジョフル、更にベルギーのアルベール国王といった国際、軍事の当事者達の行動を通して描いています。

ドイツ参謀本部の構想、イギリスの大陸派遣軍の戦争準備、大戦緒戦において大きな影響をもたらすに至ったフランス陸軍の用兵思想、ドイツ軍による残虐行為などの話題について極めて叙述的に、感情を交えずに描かれており、緒戦における両軍の、意外なまでに楽観的な雰囲気が、作為的な表現によらず、ダイレクトに伝わってくる感じで、リアルです。

ただ、司馬氏の小説に見られるような内面的な言及や、リデルハート氏のような作戦分析的な記述もなく、ただ淡々と、ひたすらに事実の記述であり、事実を持って事実を語らしめる、式の事件の記録といった形なので話題によっては少し退屈することもあるかもしれません。個人的には児島襄氏の、ヒトラーの戦い、に近い色合いを感じます。

しかし、国際政治に仕掛けられ、ドイツ参謀本部での作戦にまで落とし込まれた巨大な歯車がいかに構成されたのか?また下巻で本格的に始まる、怒涛のような戦闘の背景にどんな思想、思惑があったのか?といったことを知る上で、この上巻はたいへん重要な意味づけがあり、第一次大戦についてこれだけ豊富に国際情勢交えて描かれた本は貴重と言って差し支えないのではないかと思います。

翻訳書にありがちな、少し独特の言い回しなどがところどころあって好みが別れるかもしれませんが、下巻の怒涛の展開を待て!といったところでしょうか。