アメリカの超高級邸宅地に現れたマフィアのドン
★★★☆☆
’92年、「このミステリーがすごい!」海外編で第7位にランクインしたネルソン・デミルの大作。舞台はタイトルどおりの“ゴールド・コースト”であるが、有名なオーストラリアの観光地ではない。アメリカはニューヨーク州ロングアイランドのうち、ニューヨーク市に隣接するナッソー郡の北海岸を指す俗称である。ここは大金持ちの超弩級の高級邸宅が建ちならんでいる。
物語はそんな大邸宅のひとつに住む‘わたし’ことジョン・サッターの隣にマフィアのドンであるフランク・ベラローサが引っ越してきたことから始まる。それから善良なる市民にして有能な弁護士である‘わたし’は、精神的、経済的、職業上、社交上の激烈な変化を体験し、また結婚生活も思いがけない局面を迎える。やがて訪れる悲劇的な結末。
本書は、‘わたし’とベラローサというまったく違う世界に生きる者の対比と両者の奇妙な感情の交流を、一人称で、時にはユーモラスに、時にはシニカルに、そしてシリアスに描いているが、‘わたし’の軽妙な語り口、そのウィット、ペーソス、ユニークな夫婦間の性生活のやりとり、そして登場人物たちの会話の冴えが大きな読みどころである。
しかしこの物語のメインテーマはかつての超大国アメリカの’90年前後の衰退ぶりであろう。何代にもわたって栄華を誇ってきた大富豪たちも昔日の暮らしは望むべくもない。ゴールド・コーストの荘園的大邸宅も人手に渡り、近代的分譲住宅となるのだ。そんな町の変貌の象徴がマフィアのドンなのである。
本書は、骨太な軍事ものやスパイもの、スケールの大きなテロ事件ものなどを書くことで有名なあのネルソン・デミルが、「こんな小説も書けるんだぞ」と打って出た異色作である。
全く違う作品
★★★★★
DeMilleの作品は、John Corey シリーズしか読んだ事がなくその軽妙さが好きで、シリーズをすべて読み終わった後、この作品に出合った。全く質の違う作品で同じ作家とは思えないものであるが、その語りを中心にしたストリーに非常にずっしりしたものを感じた。軽妙さを予想していた者としては、予想がはずれた喜びを感じた。続編もペーパーバックになり、その続きを楽しみにしている。
ずっしりしていて読むのに多少時間がかかるかもしれませんが、語りの行間を丁寧に味わう作品です。
恐ろしい出来栄え
★★★★★
久しぶりにガツンとくる小説をよみました。
よくあるミステリーとはぜんぜん違う、特別なタイプの小説です。
正直上巻は少々だるいのですが、下巻になると面白さの度が一気に上がり、最後は一級のラストで終わります。
一見マフィアの隣人と主人公の物語のように思われますが、実際は夫婦の物語であり、その切なさは、そんじょそこらの恋愛小説の比ではありません。
Opinion
★★★★★
Some books are a great read...you finish them and you move on. Not this one....you finish this one and you will be compelled to reread parts like a jury reexamining evidence after a trial because the characters' behavior are open to interpretation. The genius of DeMille is that while he paints vivid pictures of the Sutters and the Bellarosas he leaves enough to the imagination to make you wonder....is this reality and yet you know you have lived or observed this if your from the Gold Coast. In the other Demille books you may love the story but you know you could never be one of the characters. In this book you know you could be or better still you are. As a Vietnam Vet and as a resident who lived on the Gold Coast of Long Island I have again met some of my patients who were in fact these characters but with Demille's verbal paint brush, his genius for a story line and his outrageous sense of humor. 試み try Giorgio Kostantinos 極度 小説 The Quest. A great read.
The Gold Coast
★★★★★
名誉、家柄、財産、知性、そして家族、どれもとっても超一流の米国の弁護士ジョンの隣に越してきた男はニューヨーク最大のマフィアのドン。ロングアイランドのゴールドコーストで社会的に対極にある男と男が繰り広げる駆け引き。マフィアと連邦政府、悪と正義、真実はどこに、ジョンは何を選択するのか。デミールお得意のウイットとジョークが冴え、フルボディのワインのように引き込まれる。上流階級WASPの実態となお残る階級意識は今まで知らなかった米国の側面を見せられたようで二重に楽しめる逸品。