歴史に黙殺されてきた真実の叫び
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インカの人々もただ黙って征服を受け入れたわけではない。だから「インカの反乱」というタイトル自体が間違っている。スペイン人がペルーに入り込んでから、一時的な和平に至るまでの時期についての記述なのだが、この時点では征服ー反乱というよりは、横暴なスペイン人への抗戦状態というのが当たっていると思われる。つまり勝手によそお土地に入り込んで政府を作ったつもりになって、反抗者は反乱と言い捨てるような世界観自体に既に問題をはらんでいるわけだ。なんともやりきれないことではある。訳者もそこは認識しているのだけど。
インディオがスペイン人より劣っていたということではない。この時代はインカ帝国の内紛があり、スペイン人はうまくそれに乗って勢力を伸ばしただけで、当のインカ人の方でもスペイン人を利用しているだけと思っていた節である。たしかにスペイン人は想像もつかないほどに残虐で狡猾で虚言だらけ。しかしこれは、過去にヨーロッパがローマ、蒙古、イスラムに征服された苦難の歴史によって形作られたのではないかと思える。
このやりきれなさの歴史は、いまだ政治家の虚言を見抜けない人々には教訓になることと思う。