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時代がつくる「狂気」 精神医療と社会 (朝日選書 825)

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 朝日新聞社
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精神医療の意義と限界 ★★★★★
 1959〜81年生まれの8人の男女の歴史学・社会学・宗教学・人類学の研究者(大学院生も含む)やジャーナリスト(患者会を組織)が、学際的に日本の精神医療を問題化した、2007年刊行の本。日本の精神医療は、個人の内面の素因に基づく「存在」の病という理解に基づく近代科学の立場から、外部との関係に基づく「状態」の病という理解に基づく前近代的な「癒しの共同体」を批判したが、戦前には精神病院の建設は進まず、代わりに私宅監置制度という形で治療なき公的管理が行われた。当時は向精神薬も未開発で、精神病患者は、問題行動の原因、国民の質を低下させる要因でしかなかった。戦後、精神医療は精神病院に一元化され、同時に国家の強権に代わって、社会的な宗教統制・犯罪予防の役割を担うことを、世論から期待される。しかしそれは精神医療の限界をも露呈することになり、1970年代以降、精神病院の開放化・脱施設化、ノーマライゼーションが提唱された。同時に、ノイローゼという総称から多様な心身相関の視点に基づく診断名への細分化、OA化に伴う一般人のメンタルヘルス問題の顕在化が見られ、日常生活の精神医学化が進行している。患者たちも自身の経験を社会に発信する運動を模索し始めた。しかし他方で、地域精神医療はいまだ未発達であり、開放化になじまない患者の収容は精神病院に忌避されるようになった。更に、精神鑑定によって刑事政策との関係が切れない精神医学にとって、保安処分の是非は未解決の問題である。また患者の実存に医師がどこまで踏み込むか、という倫理的な問いも未解決のままである。著者たちはこうした歴史を前提として、やや抽象的だが、精神医療の意義と限界の見極め、前近代の「癒しの共同体」の再評価、当事者の試行錯誤の真摯な再検討の必要性を説いている。鋭い問題提起の書として、お勧め。