終わりは始まり
★★★★☆
理想の世界とは何なのか。それを考えさせられる作品でした。機械社会の現代と重ね合わせると、とても恐ろしい。しかし、人間が愛し愛されることを学んでいければ、あの双子のように光を見い出すことができるような気がします。そして終焉を迎え、長い長い時を経て始まりを迎えるのです。
イルが最後の戦いに踏み出す時
★★★★★
その背中が「光瀬龍」の作品である事を確信させます。
また、その姿を1ページ全てに書いた「竹宮恵子」の非常にOk。
壮大な愛の物語の終章
★★★★★
機械化していく王国を脱出した主人公ジムサは成長していきます。
宿命の双子の片割れアフルとの出会い。
近親相姦という禁忌を描きながらも美しい愛の物語・・・。
こういう愛の形もすばらしいと思いますし、今から20年以上昔の作品で
ありながら、人を引きつける力があります。
アフルと出会うまでジムサの愛の対象は母一人という状況から母リリアのみでした。
か弱い母上は相変わらず昔の夫王と兄王子ミランへの思慕を捨てきれません。
心の弱い母を助けながら敵の機械と戦ってきたジムサが
生まれてすぐ引き離された妹(表向きは「王子」としていますが)と出会い
惹かれ合うのは必然だったのでしょう。
妹アフルも兄ジムサと反発し合いながらも惹かれ合っていきます。
さながらその愛は滅び行く惑星の最後の輝きです。
1巻で昇華できなかった親世代の愛が、二人に影響を及ぼしているように
感じます。(兄王子ミランの妹への思い等。ミランは機械の手に落ちた後も
我に返り妹と甥のジムサを助けようとします。機械への反逆ですが、
愛が機械に勝った瞬間だと感じる名場面でした。)
母リリアが敵の機械の手に落ちた後、双子たちの前に現れ、ジムサを
連れて行こうとした時のアフルの言葉が胸に響きます。
「この人は俺の愛する人!おまえたちなどには渡さない!」
はっきりと兄ジムサへの愛を自覚した瞬間です。
アフルは愛を知って強くなったと思います。
運命の双子は愛し合っていきますが、物語の幕切れはやはり切ないです。
でも美しい愛の物語だと思います。