新宿の300年を背景に、一つの血筋が辿られていく。
その血筋に連なる人々がなしうることは、ほぼ、生れて、
ぎりぎりの生活を送り、子を産み、死んでいくだけ。
彼らは、後には何も遺さない。ただ、血だけが伝わる。
ただし、その分、彼らは、生命力が強いというのか、
神話の登場人物のように、H指数(?)が高いのです。
彼らの連綿たる血のつながりの起伏が本書の魅力の
中核をなしていそう。男色もあるし。
途中何度か、家系図の記述に終始して、悪く言えば手抜きかとも
捉えられる箇所がありますが、それは本書の未熟な点というより、
構成上のバランスでそうならざるを得ないのかも。
過去300年に遡るそれぞれの時代の新宿は、十分緻密にかつ
極めて自然に描写されており、血統に関するより以上の叙述は、
本書が持つ疾走感をスポイルする気がします。
本編だけでなく、巻末の書評も傑作です。文庫化されてよかった。
評論家の先生方もムキになってて、当時の衝撃が伝わってきます。
主題歌は、椎名林檎の「歌舞伎町の女王」かな。この曲実は、
1998年(新宿生誕300年)に発表のよう。
新宿を舞台に数十人の登場人物が300年ひたすら突っ走る。信じられないほどのドライブ感、興奮と覚醒、読み終えたあとの深い余韻・・・。こんな小説、読んだことがない。