傷口に塩をすり込むような、この本の内容は、読んでいる間中、その痛みもさることながら、私に“なぜ?なぜ?なぜ?”とどこに向けていいのかわからない問いを、発し続けさせました。そして、つらかったのは、社会を変えていこうだとか、大人が再教育されねばならないのだとか、簡単に答えのみつかるものではない袋小路に追い込まれてしまっているという認識が残ったことでした。★は5つで、書かれた内容にこれほど打ちのめされるのも珍しいことでしたが、私には後味の悪いものとなりました。
主人公の菜々は神戸の「酒鬼薔薇聖斗」が逮捕された日、 ある重大な決意をします。親から見れば、なんて無謀な、と思えるシーンですが、彼女なりに必死に自分を見つめた末の行動なのでしょう。涙が止まりませんでした。
「少年の薬物汚染」も「家庭内暴力」も遠い世界の話ではありません。小説ですから、そのような問題に対する具体的な処方箋が示されているわけではありませんが、読み終えてから、確かにかすかな希望を感じました。 それをひとことで言うのはとても難しいです。 それで高校生の娘にこの本を読むように勧めてみました。
活字などほとんど読まない娘ですが、ずいぶん熱心に読んでいました。そして読み終えてから、いつもは決して話してくれないようなことをポツリポツリと話し始めました。 とても嬉しかった。親子で同じ一冊の本を読んで、感想を言いあうなんて初めてのことです。 今年読んで本のなかで、いちばん感動した本です。