平岡正明が死んだって、何かの間違いじゃないのか、、、。
★★★★★
平岡正明が死んだ。夕刊でその死亡記事が目に飛び込んできてびっくりした。余りに唐突、悪い冗談だろうと思った。ここ数年、リスペクトとも言うべきその著作群が復刻されつつあり、自身も精力的な執筆活動をされていたように思う。68才、そんな御年だったのか。氏が歩んできた経歴を考えれば、その通りなんだろうが、私には永遠に不良中年のイメージが強かった。
本書は、その最後の著作、今年4月に書き下ろされた物。平岡初の新書(だと思うが)だけに取りあえず購入したものの、書棚に押し込んだままになっていたのだが、急いで読了した。
世評など関係なく、自身が触れたいマンガ家と作品を選び、いつもながらの平岡節で、思想的、社会的、犯罪的、革命的に、そしてジャジィにリズミカルに独自の視点で斬っていく。
昭和の街並み、文化、流行、風俗、正に平岡が見てきた風景が語られ、それが社会科学史まで昇華されるようにも読めるのが妙味(モチロン、独断的ではあるが)。
正直に言うと、ここで紹介されている作品は、何ひとつとして読んだ事がない。けれども、この本は面白い。平岡の相変わらずの世界観による作品解説が、やっぱり刺激的だからである。
本書が遺作とは未だに信じられないが、自身のフィールドである“昭和”の時代と絡ませての作品だったのは平岡らしい。
三馬鹿ゲバリスタのかっての同志太田竜の後を追うように逝ってしまった平岡、「竜将軍、オレを道添えにしやがったな」とでも言っているのだろうか。
ご冥福をお祈りします。
人を選びますが、ともあれ「痛快」な一冊です
★★★★☆
著者はその筋では有名な人らしいが、私は本書で初めて読んだ。
新書にもかかわらず、一人称は「俺」。
なんだこりゃ、とすぐに読む気が失せる。
それでも、読み進んでいくうちにだんだんと虜になっていく。
マンガのストーリーを機関銃のように解説していく文章には麻薬的な魅力があるし、傍若無人なれど切れ味鋭い解読も、それが正しいのかどうなのかわからないが、文章として痛快だ。
私はここで取り上げられるマンガの半分以上を読んだことがないのだが、それでも十分面白い。
しかも、そのマンガを「読んでみたい」と思わせる力がある。
そういう意味では、マンガ評としてレベルが高いのだと思う。
ただ、最後に扱っている「こち亀」。
これについては、自分の少年時代のノスタルジー丸出しで手放しのほめっぷり。
なまじ知っているマンガだけに、
「この人の解読って、実はすごく薄っぺらなのでは?」
と、他の(私のあまり知らないマンガについての)評論の信憑性も、なんだか怪しくなってきてしまった。
まぁそれも含めて、読んでいて飽きない一冊です。
ところで、校正が甘く間違いが目立つのは、急いで作ったからなのか、出版社のやる気がなかったからなのか・・・?