ECDの完全体
★★★★★
TB808を駆使したアシッドな前作、最近のフリージャズ的趣に傾いてきたライヴ、情念的ともいえる歌謡曲ディグ「プライベート・リッスン」シリーズなど、全ての方向に振り切りまくったからこそ完成できた2008年現在の代表作。アシッドなベースラインも、歌謡曲サンプルも、ジャズもアングラロックも全て一巡したECDがようやく全ての要素を包括し、トータルなECD像を結んだアルバム。
相変わらずライムとアレンジのオリジナリティは他のヒップホップ勢の追随を許さないが、キラーチューンM4「FINAL JUNKYのテーマ」に代表されるように、今回のECDの曲はとにかくその独自性はそのままにフロア映えする華やかさ、ポップさも備えている。冒頭「翼をください」のサンプリングにビロビロのアナログシンセが10分以上絡むのを聞いて思わずたじろぐ人もいるだろうが、M2以降は、かってないほどキャッチーなECDナンバーの応酬である。彼の今までの価格破壊的な自主制作盤に比べれば安くはないが(それでも安いが)、それだけ彼自身、相当の自信作であろうことは間違いない。そういう人だ。