ブッダの生涯が生き生きと目の前に
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ブッダというタイトルの本を数多く読んだが、わかりやすさでブッダに関する本としては最高に位置づけられる。今の仏教の姿しか知らない人には是非ブッダについてもっともっと知ってほしいと思う。仏典のブッダは「師は告げられた」など3人称で語られることが多く感情抜きの姿でしかないが、この本はブッダが愛情深く理性あふれる人間の姿として描かれていて、ブッダの教えを丁寧に説明している。生き生きとしたブッダがついこの間の出来事のように語られているのをいまだかつて聞いたことがないが正直わかりやすく翻訳した訳者の貢献度はかなり高いといえる。
お釈迦様の人生を記した一代記!
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文章が小説風になっており、ドラマティックに進んでいるので、
下手に原典(岩波文庫etc)を読むよりも、お釈迦様の歩んだ道のりが分かりやすくていいと思います。
ただし、本書はティク・ナット・ハン氏みずからの経験も入っており、
厳密さの上では原典にかなうことはありません。
しかし、「お釈迦様の歩んだ道のりとはこうなのだ」と知らしめる良書であることには変わりありません。
本書の帯に「映画化決定」と文字が躍っていましたが、果たしてどうなることやら…
今後が楽しみな本書です。
生きたブッダに会える
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本書にはブッダの様々な教えと行法が他書に比べて詳しく解説されており、しかも81章からなる全エピソードのパーリ語経典と漢訳経典の典拠が明らかにされている。読み始めると、ブッダに付き添いながら教えを聞いているような錯覚を何度も味わった。“北方・南方の両経典群を開かれた心で学習する必要がある”と考えるティク・ナット・ハン師らしく、ブッダの教え(南方経典群)とその歴史的変化(北方経典群)の契機を受け止めて、そこに込められた真摯な意図を私たちが自然な形で理解できるように表現されている。
ブッダの火界定を述べた「ウルヴェーラーの神変」を扱う第26章は、神通力に関する描写を火事として処理しており、一瞬、違和感を感じたが、“ブッダが弟子達に「超自然的な力を獲得したり発揮しようとして時間と労力を無駄にするな」と戒めていることに基づき、古いパーリ語経典に描かれたブッダの奇跡を強調したくない”と述べていることを知って、納得した。
私はブッダが『空の瞑想』を説いている第65章を読み始めて、釘付けになった。ブッダの説明を心の底から理解するために、何度も読み返した。丁寧な説明なのだが、気がつくと言葉に振り回されていることに気づくのである。やっとの思いで、眼が開かれた感じがした。そして、「空(くう)」と「空(から)っぽ」を識別するために、後の世に、「いっぱい(有)」と「空っぽ(無=非存在)」と対比して「無」が登場する理由も理解することができた。