ハルだけでなく観客そのものが試される珠玉の名作!
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この映画、すごいよ。映画なのに、画面に映っているものは、全部ウソなんだ。ハルと同じように、観客も、そのウソの方を見せられる。それでいて、それがウソであることを観客は知っている。だけど、そのうち、そのウソと思わされている方がじつはホントウで、ホントウとされている方がウソであることに気づく。そしてそして、そのうち、どっちがホントウで、どっちがウソでも、どうでもよくなる。まさにそこにローズマリーがいるなら、どんな風に見えようと、それがローズマリーだから。
パルトロウも、はまり役。人が自分のことを見せかけだけしか見てくれない、というのは、美人でも、ブスでも、結局は同じことだもの。容姿に限らず、自分に自信がもてない女性、それを腫れ物のように扱う父親。周囲の人々。そんなところまで、繊細に描き出されている。手で歩くウォルト役のレネ・カービーも、シロウトなのに、演技がうまいし、すごくスマートだ。
ハルにアドバイスするアンソニー・ロビンスは、ほんもの。この人、コーチングでは、ほんとうに有名な人だ。ハルの親友のマウリシオは、ロビンスが催眠術をかけた、と言って騒ぐけれど、ロビンスは、ちがう、催眠術を解いたんだ、って言っている。ああいうのが美人、こういうのがブス、って、思わされているのは、男も、女も、どこかのだれかに催眠術をかけられてしまっているんだろうね。そして、この映画は、その催眠術を解くためのアドバイス。
エンドロールまで見ようね。作った人たちが、みんな、自分の顔を出している。かっこよくても、悪くても、それが自分の顔だ。それでいいじゃないか。