ある夏の日、両親の離婚で引越しすることになった小学6年の少年・見春(伊藤敦史)は、東京都保谷市と埼玉県日高市を結ぶ送電線、通称“武蔵野線”が一体どこまで続いているのかを知りたくなり、2歳年下のアキラを連れて送電線を1号線までたどる旅に出た…。
第1回PFFの入賞者でもある長尾直樹監督が、日本ファンタジー・ノベル大賞を受賞した銀村のぼるの小説を映画化したキッズ・ムービーの秀作。淡々としながらも叙情的かつノスタルジックな演出が大いに功を奏し、子ども時代はすべてが冒険であったという、大人になると忘れてしまうことまで思い出させてくれる佳作である。現在TV版『電車男』などでも活躍中の伊藤敦史が子役時代に主演した作品ということでも、今では価値ある作品だ。(増當竜也)
いつしか叶うsaja dream
★★★★★
少年の夢はきっとこんな形をしている。
ボクたちが求める夢は、社会的な成功なんかじゃなくて、
ずっと個人的なものだったんじゃないか。
そんな大切なコトを思い出させる作品です。
原作の素晴らしさもさることながら、
ささやかで強い「1号鉄塔に行く!」思いが、
厭味もなく、自然に描かれています。
女の子にはわかんないだろうなって
言いたくなる、鉄塔調査隊員でした。
誰にでもある記憶
★★★★★
同名小説の映画版 誰にでもあった平凡な夏休みの記憶 得てして忘れているそんな記憶を思い出さずにはいられない逸品!終始子供目線で撮られた子供の一夏の冒険を通してまだクーラーなど普及していなかったあの頃を思い出す秀逸な表現!淡々としたストーリーにじわじわハマります!
僕の足はどこまで歩いてゆけるのだろう
★★★★★
小さいから、ずっと見上げていた鉄塔。よく、お父さんと見上げた鉄塔。
形も二種類、男に見えるオトコ鉄塔と女の人のようなオンナ鉄塔。
僕は、この町の鉄塔をずっと見上げながら大人になるんだと思ってた…。
そんな夏休みのある日、小6の見晴(海猿でも好演してた伊藤淳史くんの子役最後位の時期)は
鉄塔の下に武蔵野線【71】と表記してあるのを見つける。
『これをたどっていったら1号鉄塔まで行けるはず。1号ってどんな場所なんだろう!?』って
思いに取り付かれた彼は二歳下のアキラに『なぁ、行ってみたくないか?見てみようぜ!』てな事を
言って、この冒険に誘い出す。かくしてウォーキングロードムービーが始まる。のだが。
真夏の日差しを浴びて暑いし、鉄塔の立ってるような場所は色々と大変だし。
おまけに夕焼け日暮れて辺りが暗くなり出す。と、もう、そこは小学生心細くもなろうと言うもの。
お約束通り、2人はケンカして仲間割れ。さぁ、この先どうなってしまうのか?(カビラ慈英風に)。
見晴の鉄塔に対する思い入れ、描き方が、映像や音楽としっかり結び付き、
見終わった後かなりの余韻に浸れた。これからの見晴にエールを送りたいと思う。
【夏の庭】や【スタンド・バイ・ミー】に感動したあなたに。
永遠の今を駆け抜ける
★★★★★
夏休みが終わる前に転校してしまう見晴が、自分の下駄箱にビールの王冠を置いていき、その後で誰もいないプールをじっと見つめる、というシーンがあります。
台詞はないのですが、彼の切ない心情がとてもよく表現されていて、こころを打たれます。
この映画は、そうした刹那の数々を綴った、映像コラージュとして観ることもできると思います。
雑木林と彼方まで続く畑、雑草だらけの公園やジュースの自販機、そして抜けるような青空や夕映えを背景にした鉄塔たち。そのなかを二人の少年は、まばゆいばかりに駆け抜けます。
見晴の父親への複雑な想いや、鉄塔へのこだわりの原因などは、あえてオブラートに包み先鋭化するのを避けているように思われます。
それがかえって、光や風とその匂いまでも感じさせる映像自体のインパクトに結びついていて、忘れかけていた「あの時」を映し出してくれる。そんな一瞬が波のようにやってきては、心に跡を残していきます。
大人への階段?!
★★★★★
ひと夏の冒険物語!と言ってしまっては元も子もないんですが。
ほのぼのとしてる中にも、しっかりと苦々しさも感じつつ。
武蔵野線を追うという、明確な意味がありそうでない。
そんな目的がまたなんとも言えず、この作品の魅力となっていますね。
やっぱり、夏にみると格別な気がする。