朝鮮総連と長銀の歴史がよくわかる
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本書は、北朝鮮系の信用組合である「朝銀」、在日本朝鮮人総聯合会(総連)、北朝鮮本国の3者の関係がその設立当初からどのように変遷してきたかをみた通史である。特に、当初は、在日朝鮮人を支援するという名目で北朝鮮本国から総連へ流れていたカネが、本国の経済運営の失敗により、逆に総連・朝銀が集金・送金マシーンへと変貌していった経過が的確に記述されている。
(注)信用組合とは:協同組合形態をとる金融機関。比較的小規模なものが多い。かつては都道府県内のみを営業区域としており、北朝鮮系の信用組合である朝銀も「朝銀東京」「朝銀大阪」のように都道府県ごとに設立されていた。
本国に帰還した朝鮮人をいわば人質にとってカネを集めさせるなど、北朝鮮本国の集金方法は手段を選ばないものであり、拉致問題だけでなく、カネの面からも、北朝鮮がどんなにひどいことをしてきたかがよくわかる。そして、バブル期に、送金を促がされた総連が自らパチンコ屋や不動産開発にのめりこみ、巨額の損失を出していった経緯や、金融機関として朝銀がどのようにそれに協力していったかについて、ポイントをおさえて的確に記述されている。
私は、朝銀破綻前後の「北朝鮮送金疑惑」についておぼろげな知識をもっていたが、本書によって、その知識がきちんと整理できた気がする。たいへん有益な本であり、感心して読んだ。
ただ、私のように「総連や朝銀に興味を持ちながらも、知識が不足している人」にとってはすごく興味深い本だと思うが、「総連や朝銀の名前も聞いたことがない」というような人にとっては、たいくつかもしれない。また、在日朝鮮人の人にとっても「こんなことは知っている」という内容かも知れない。
関心・興味、知識の有無によって、評価の分かれる本だと思います。