カウンセリングといふ社会恢復の営み
★★★★☆
途中で少し長い空白があったので、今回、聊か読む勢ひが削がれゐたと感じてゐました。さうは言っても、この本には、カウンセリングについての濃密な語りが詰まってゐたと感じました。カウンセリングといふ具体的な想定をイメージしながらの語りは、概してリアリティに溢れ、カウンセリングが奥の深い世界を持ってゐるといふ事を実感させるものでありました。
そもそもカウンセリングは、一見何もしないやうでゐながら、実は凄いパワーが必要で命賭けとも言へるエネルギーがないととてもできない藝当である事も朧け氣ながら分かって来ました。そして、魂の籠った努力と取組みは、必ずや助け舟の如き思はぬ展開が起きて来てしまふ不思議さ。児童文学や古典の物語、あるいは、小説の中には、尊い人間の在り方のテーマがぎっしり詰まってゐて、学ぶに値する世界が開けてゐる事も改めて感じさせられました。
今回の一連の流れの中で、更なる人間理解への研鑽と努力の道に踏み分けて行った感を深くしてゐます。下巻がいかなる展開されてゐるのか大いに興味が出て来た所です。
どれか一冊選ぶなら
★★★★★
河合隼雄先生の本はこれまでに20冊ほど読んだ。
そのなかでどれか一冊を挙げろと言われれば、本書を挙げたい。一冊ではなく上下二冊になるが。
本書は大阪四天王寺主催カウンセリング研修講座の講義録をまとめたものだ。
本書によりカウンセリングの世界をかいま見ることができる。河合先生の実体験に基づく話は人間の心に関する洞察と知惠に満ちている。
近年、子供が親に暴力をふるう事件が多発している。しかもいわゆる良い子が起こす場合が多いので、親はどうしてよのかわからない。なにひとつ不自由なく育ててきたのに、なぜ我が子に暴力を振るわれなければならないのか。
子供の要求通りにああしてやってもポカリと殴られ、こうしてやってもポカリと殴れらる。そして耐えきれなくなってカウンセラーの所に相談に来る。
これはいうなれば、子供という禅の老師に、親という弟子が鍛えられているのだと河合先生は面白い喩えを使う。
禅の修行では、老師がわけのわからない課題を弟子に与えて、その答を迫る。これを公案という。たとえば、犬にも仏の心があるか。弟子は一生懸命考えて、有ると答えても殴られるし、無いと答えても殴られる。なにも答えないともっと殴られる。どうしてよいかわからずに、引き下がってさらに考える。
この状態が家庭内暴力によく似ているので、河合先生はこれを「家庭禅」だという。
家庭禅において親は子供からもらった課題をどのように解決すべきか。本書はそれにヒントを与える。
この話は本書のほんの一部でしかないが、いちばん感心した箇所なので紹介した。
本書は自分自身の存在、対人関係、子供の教育、夫婦関係などに悩んでいる人、つまりすべての人にオススメだ。
人間関係、コミュニケーションといった領域に問題意識をお持ちの方にはお勧め
★★★☆☆
故河合隼雄氏というと、元文化庁長官で著書も多く、フルートまで吹いちゃう多才なおじさん、というイメージがあるが、元々(大変失礼)は、ユング派臨床心理学の大家であると共に、現役の心理療法家(カウンセラー)であった。
本書は、四天王寺人生相談所が開催するカウンセリング講座における河合氏の講演記録がベースになっている。
1985年に単行本が出版されているから、かなり古い本ともいえる。
しかしながら、「カウンセリング」というものを知りたい、と考える初心者にとって、時代を超えて非常に有益な本である。
いわゆる学術書ではなく、一般向けの講演記だから、平易な話し言葉で綴られている。
しかしそこに、ユング派心理学の基本的姿勢や、それを日本社会にカスタマイズした「河合心理学」のスタンス、宗教とのかかわりなど、実践に即した要諦が余すところなく語られている。
僕は、本書を中間管理職のリーダーシップといったテーマの延長線上で手にしたのだが、示唆されることが多かった。
人間関係、コミュニケーションといった領域に問題意識をお持ちの方にはお勧めの一冊である。
面白い!
★★★★★
この本は、河合隼雄さんの四天王寺カウンセリング研修講座の講演記録を元にしてまとめられたものです。
河合先生は、臨床心理学者であり、日本人として初めてのユング派分析家でもあります。
先生については色々なことを言う人があるようですが、わたしは、比較的初期に書かれたこちらの本を読み、タオルが涙でぐっしょりになりました。
そして、後半部分では笑いが止まらなくなりました。
河合先生はオモシロイです!
わたしも泣いたり笑ったりと忙しい人間ですが。。。
もちろん、それだけではなく心理療法の技法の非常に専門的なことがとっても分りやすい言葉で書いてあるのですごいなぁと思いました。
かなりお薦めの本です。
カウンセラーの入門書
★★★★★
講演の内容をまとめたもので、大変読みやすい。カウンセリングの極意がいくつか述べられている。「共感して受容しているとクライエントは自分の力で治る。」「共感、受容ということは命のかかった仕事」「たとえクライエントが少年院に入るようなことになっても見捨てずに待つ」「医者は薬、お百姓さんは土、カウンセラーは『時』を頼りにする」など。読めば、カウンセラーのあり方が分かるが、同時に難しさもよく分かる。