1926、28年に録音された歴史的名盤。弾けるようなイキのよさ、三者のそれぞれの個性がぶつかり合うスリリングさは時代を超えてリスナーを刺激する。音質は少々レトロでも、古びた感じがまったくしないのはさすがだ。カザルスのチェロは大地にしっかりと根を下ろし、地の底から湧き上がってくる生命感をすくいとって音にしているかのよう。ティボーのバイオリンは空中を浮遊し、踊るような線を自在に描く。コルトーのピアノは夜空に開く大輪の花火。華麗なパッセージがきらめきながら空間を埋め尽くしていく。弦楽器奏者2人のうち、より独特なスタイルを持っているのはティボーの方だ。ポルタメントをきかせた粋な節回し。早め早めに次のフレーズに飛び込んでいく気っぷのよさ。おしゃれで、洗練されていて、勘が鋭い。一方のカザルスは率直で雄々しい。そして、このトリオに繊細さと優しさを与えているのがコルトー。最初は弦楽器奏者2人から半歩下がっているような印象を受けるかもしれないが、聴けば聴くほど存在感が増してくる。タイトルになっているベートーヴェンの「大公」では、軽やかでキビキビした演奏が心地よい。ゴツゴツしないベートーヴェン演奏の好例だ。ただし、フォルテになったときの爆発力は容赦がない。鍵盤を思い切りひっぱたき、弓を弦にたたきつける激しさは聴いている方がたじろぐほどだ。しかし、このトリオらしさがよく出ているのは、むしろ併録のシューベルトの方かもしれない。曲調がシンプルですっきりしている上、メロディーを歌い上げる部分が多く、「大公」よりもさらにリラックスした演奏になっているためだ。(松本泰樹)
なんというリラクセーション効果
★★★★☆
演奏の良し悪しを言う以前に、音が悪い。ところどころのノイズも気になるし、最初ははっきりと「買う価値なし」といいたくなった。ところが、この酷い音と感じたヴァイオリンの、眠気を誘う心地よさはいかばかりか。音が悪いことでかえって生み出される、なんともいえぬ雰囲気。いや、その音の悪さを通り抜けてくる演奏者の技量も、おそらく関係してくるのだろう。
個性の融合
★★★★☆
軽やかに螺旋階段を駆け上がりながら、舞い落ちる羽を見るような音。三人の調和が織り成す優雅な仕上がりです。体を覚醒させるルービンシュタインの”大公”と聞きくらべてみるのも悪くは無い。
カザルスの醍醐味
★★★★☆
星を四つにしたのは、やはり残念なことに録音レベルが悪い。
でも、録音が悪いにしても星を四つつけるだけの良さがある。
あまり、クラシックに詳しくなかったけれど、これを聞いた
ときに一つの感動があり、他のカザルスの演奏も聞きたいと
思わせる作品です。