ライヴで聴きたかった演奏
★★★★☆
クレーメルは不思議なヴァイオリニストだ。研ぎ澄まされた音は内面に沈殿していくようでいて外にはエキセントリックに響く。バッハやイザイの無伴奏などでは、そうした矛盾的調和がよく表れていて素晴らしい。
このアルゲリッチとの共演はどうか。確かに面白い。アルゲリッチはまさにそれ以外ないスタイルで、クレーメルの様子を伺いつつも奔放に暴れまわる。ピアノの上手さは言うまでも無い。クレーメルは一見たじたじとなりながらも自己の世界にこだわり、アルゲリッチに挑戦していく。現代では無類の演奏だろう。
だがこれを愛聴するかとなれば、個人的には二の足を踏む。普段使いにはいささか度外れな感が否めない。こういう演奏はライブで聴いてこそ最高なのだ。二度と味わえないような感動が録音ではその半分も味わえないように思えて残念・・・。