ちょっとやりすぎ?
★★★☆☆
「御暇」という通り、長崎での暮らしを御暇した座光寺藤之助がいよいよ江戸へと戻って来ます。勿論、そう簡単に江戸に帰ってくるわけにはいかず、長崎では最愛の女性・玲奈との結婚式もあれば、彼をキリシタン取り締まりの邪宗改めに売ろうとする人間を一人片付けなくてはならなかったりと色々あるわけですが、それも無事終わり、いよいよ本拠地の江戸へと主人公は戻っていきます。
その主人公に、今巻からは新しい武器が与えられます。
クレイモアという巨大な剣がそれです。日本刀ではなく、両刃打ちの西洋刀で日本刀の倍くらいの長さを持ち、扱う人次第では人馬ごとそのままぶった切るような豪刀です。刃渡りが四尺ですから、1メートル30センチ強、柄を入れると1メートル80センチほどの巨大なこの刀を藤之助はふりまわすことになります。乱戦の剣である「天竜暴れ水」と舞いのような剣も持ちつつ、なおかつ小鉈、44マグナムまで使いこなす主人公は、或る意味すでにランボーのような歩く武器庫となっています。正直、やり過ぎです。時代劇、武士ものとして読んでいくとやっぱりどうしても違和感が出ちゃうと思います。
ただ、この物語は背景が明治維新直前の激動の時代なので、主人公がただの剣客だけではなく、時代そのものを反映していく人物であるという設定だから、こういう無茶もまた著者の狙い通りなのかも知れません。恋にも奔放、武器も自在、身分も幕臣でありながら将軍家の最後を看取るお役目を持ち、と通常ではない主人公の物語です。