節目の十巻
★★★☆☆
交代寄合伊那衆異聞シリーズの最新刊、第10巻です。
幕末の動乱期の快男児を描いたこのシリーズ、主人公の座光寺藤之助は前作までしばらく長崎にいっていましたが、本作からは江戸と在所に戻って来ました。戻ってきた主人公が知ったことは、まさにアメリカをはじめとした列強各国に開国を迫られ、開港もやむなしとなってしまっている現状。藤之助は、自身が各国の軍備を見聞きしたのと、実際の清国の様子を目の当たりにしてきて、開国はやむなしと考えるものも、国内では攘夷派も勢力は強く、幕府内でも暗殺合戦の様相となり、彼もその中で命を狙われます。
ということで、動乱に次ぐ動乱、波瀾万丈に次ぐ波瀾万丈のこのシリーズ、あとがきを読むまで気がつきませんでしたが、幕末ものなのに、今まで出て来た幕末物の主要メンバーは勝海舟ただ一人、剣の腕もさることながら、リボルバーやクレイモアまで操るこの主人公は、果たしていつ坂本龍馬や土方歳三さん以下の新撰組の面々と出会うのか、上様とはいつ相見えるのか、それとも会わないままで物語は進んで行くのか、幕末もので彼らが出ないというのもありえないでしょうけれど、うまく世界が融合するのか。
そのあたりが今後の楽しみです。
一介の武士を描いた時代物や、捕物帳的なものもいいけれど、こういう快男児物もエンタメとして楽しいものです。