ジョシュア・ベルの代表的協奏曲録音でしょう
★★★★★
1967年アメリカ生まれのユダヤ系ヴァイオリニスト、ジョシュア・ベル(Joshua Bell)によるヴァイオリン協奏曲集。かつてリリースされた2枚のアルバムを2枚組にまとめた再編集廉価版。収録曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ヴィエニアフスキのヴァイオリン協奏曲第2番、ブラームスのヴァイオリン協奏曲、シューマンのヴァイオリン協奏曲の4曲。いずれもオーケストラはクリーヴランド管弦楽団だが、指揮者はチャイコフスキーとヴィエニアフスキではアシュケナージ(1988年録音)、ブラームスとシューマンではドホナーニ(1994年録音)が務める。
ベルのヴァイオリンはやや線が細いというのが第一印象だが、弓使いが柔らかく、そのため軽い音から重い音への移り変わりが自然で、非常になめらかに聴こえる。ソフト・フォーカスされた現代的なマイルドな音色ということが言える。繰り返し聴くと、その魅力が良く分かってきて、気持ちよく音楽を楽しんで聴くことができる。
ここで収録されている4曲はいずれもバックが好演で、録音も優秀なのがうれしい。アシュケナージの指揮はいつものようにやや早めのインテンポを主体とするが、自然力学に反しないタメが心地よく決まり、音楽の品格が高く躍動的だ。特にチャイコフスキーは名演だろう。ヴィエニアフスキは特に終楽章で独奏者の更なるマジックを期待する向きもあるかもしれない。ドホナーニもよい。非常に凛々しいシャープな響きで、ブラスセクションの階層的な響きが心地よい。ことにブラームスの終楽章の推進力は聴き所だ。シューマンもリリカルな表現で、独奏ヴァイオリンと一体となった交響曲を聴くようだ。